ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
やすらぎトーク UP地域の力 暖流 見えない世界を生きる 統合失調症を生きて 福祉ニュース わたしの作品 テーマとーく
福祉ニュースから  <<2006年一覧  2007年>>

福祉と融合「経営パラリンピック」(2006/10/17)


モノづくりの事例などが発表された経営パラリンピック

 福祉と経営の融合を目標に、学生や企業人、企業0Bなどで構成するNPO法人(特定非営利活動法人)が「経営パラリンピック」と名付けたユニークな研究、実践を続けている。今年も第5回大会が9月中旬、大阪市東淀川区の大阪成蹊大学で開かれた。共同作業所などが、利益や商品開発、IT(情報技術)システムなど経営的要素を導入している実践例が報告された。障害のある人たちが、売れるモノづくりや時代のニーズにあった活動に挑戦する姿が、参加者の共感と感動を呼んでいた。


障害者の挑戦共感呼ぶ 大阪市で実践例発表

 同法は今年4月に施行。65歳以上の高齢者に対して家庭と養介護施設での虐待を防止し、養護者の介護負担の軽減など支援するのが骨子。虐待を身体的虐待、長時間放置など5種類に定義。虐待の早期発見、通報の義務を定め、また関係機関による立ち入り調査、警察の協力、高齢者の一時保護などの措置を地方自治体に課している。

 経営パラリンピックは、同大学の山本憲司教授のゼミや京都産業大学の学生、OBを中心に、企業や福祉施設の協力で運営している。経営学を専門とする山本教授が、和歌山の松下電池工業の福祉工場を見学し、高度な仕事の中に、障害のある人たちが集中力、モチベーションを高めて働いている姿を知ったのがきっかけ。ヤマト福祉財団の故小倉昌男理事長の支援などで、2001年、第1回の「経営パラリンピック」を開いた。

 山本ゼミではその後、学生たちが、各地の福祉事業所を回り、対話を重ねて障害のある人たちの仕事を学習。その成果を、毎年開く経営パラリンピックの場で発表してきた。過去4回で、合わせて29事業所から事例発表が行われている。

モノづくりの事例などが発表された経営パラリンピック  第5回の今回は、企業や福祉施設の関係者や障害のある人たち約300人が集まった。基調講演で山崎篤ヤマト福祉財団理事長が「市場経済の中で自立していくには、買う人の善意を期待していてはいけない。いいものを安く提供することが大事」と、参加者に話した。

 事例発表は、ハイワークひびき(東大阪市)、第三工房ヒューマン(吹田市)、堺あすなろ園(堺市)が、メール便事業の取り組みや、事業成長の現状を説明。コミュニティネットワークふくい金津事業所(福井市)は、パソコンを活用した利用者の健康と人づくり支援システムの導入について発表。会場から「学校現場でも使えそう」と評価する意見も出された。また、麦の郷(和歌山県岩橋)は、地域の材料を生かした天然塩や納豆づくりなど商品開発の取り組みを説明するとともに、地元農協、農家と連携した循環型ものづくりの実践を報告した。

 これらの発表に対して、亀井勝ひびき福祉会理事長は、総評で「施設が、いいモノづくりに向けて変わろうとすることが大切」と述べた。参加者のヒューマンカフェ&ベーカリー(大阪市)アドバイザーの早川徹さんは「障害のある人たちも、愛情と根気をもってサポートすれば、仕事ができる。そうした例がいくつもあった」と高く評価した。また第二ぴりか作業所(大阪市)の松岡ミネ子所長は「いろんな経営ノウハウが学べて、参考になります」と熱心に聞いていた。

 会場の外では、福祉事業所によるバザーも開かれ、食品や紙製品など多数が出品され、参加者の関心を集めていた。