ともに生きる・福祉のページ
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認知症の人と家族 笑顔旅行(2006/10/24)


リスクを克服して行われた城陽と奈良の二つのグループホームの一泊旅行での全員そろっての夕食(鳥羽市の旅館)

 グループホームまごころ城陽(城陽市)と同それいゆ学園前(奈良市)は、利用者に泊まりがけの温泉旅行を―と異例の企画をたて、このほど実行した。認知症の人たち、またその家族にとって気分転換の温泉旅行などを実現したいと望むものの、その実現は旅行の最中や宿泊先のケアなどリスクが少なくない。このため泊まりがけ旅行を試みるケースは家族でも、また介護施設でも数少ない。両ホームでは、周到な計画と家族やスタッフの協力によって推進し、「利用者さんとご家族に笑顔の旅を贈れた」と総括している。


周到準備リスク克服)


 両ホームはマイクロテスト社(本社・宇治市)の介護事業部が経営。城陽が3年前、学園前が2年前に開設され、両ホームとも定員は二ユニット、各18人。

 城陽ホームは昨年、岡山へ一泊旅行を試み、成功させているため、創立3周年の記念事業として両ホーム合同で、三重県鳥羽市の温泉旅館へ1泊2日の旅行が計画された。

 当日の参加者は利用者が32人、家族21人、スタッフは主治医や看護師を含む24人という大人数。利用者は最高齢97歳から69歳までで、大半が自立歩行ができる中程度の認知症状。それぞれのホームからバスで出発し、途中で合流した。

 1日目午後、旅館着のあと温泉に入った。歩行の困難な人だけは家族ぶろを使い、ほかは大浴場でくつろいだ。次いで夕食・宴会。たたみの大広間の一角にいす席を設け、座るのがむずかしい人たちに対応。宴会は家族とともに会話が弾み、食後にはカラオケやダンスに興じるまで盛り上がったという。

 その後、家族と施設管理者などが懇談し、さまざまな要望や苦情などを話し合った。一方、利用者は就寝したが、スタッフがすべての宿泊部屋にはりつく体制をとったが、はいかいなど問題行動はみられず、「いつもよりぐっすり快眠」(辻巡美・副施設長)。

 2日目は朝六時、起床。伊勢名物の「おかげ横丁」を見物し、昼食。その後、帰路につき、バスの中ではゲームや風船送りなどレクリエーションを楽しみながら、夕方、無事帰着した。

 長年福祉機関で働いてきた辻さんは、自分の母親を介護した時、家族そろっての旅行を母が最も喜んだという経験が忘れられないという。その喜びを利用者さんにも、と企画に秘めた思いをもらす。計画立案では想定されるリスクに周到に対応し、昨年の旅行の際のノウハウを生かした。特に気遣った点は入浴前に医師による健康診断と入浴時の安全確保、就寝時のケアに万全を期した。

 「利用者さんがご家族と一緒に旅行されるのがなんといっても喜ばれることです。それを手助けでき、みなさんの笑顔に心が洗われます」と辻さんの感想。内藤真施設長は「旅行を通じてご家族と利用者さんが一緒にくつろがれる姿にふれた後、スタッフの対応が一皮むけたように変わってきた」と評価している。

〔メモ〕まごころ城陽(城陽市富野南清水68―5 TEL0774―54―7761)
それいゆ学園前(奈良市学園朝日町9―1 TEL0742―41―6736)