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「目で聴くテレビ」の京都情報(2006/10/31)


手話、字幕をつけて放送しているKBS京都の「目で聴くテレビ」

 耳の不自由な人のために、KBS京都とCS(通信衛星)放送で放映されている「目で聴くテレビ」が、視聴者を広げている。京都市聴覚言語障害センター(京都市中京区)は、この「目で聴くテレビ」の京都発の番組を制作している。「聞こえなくても、見て分かりやすい画面」を目標に、企画から取材、撮影、編集のすべてを同センターで行っている。担当する職員らは、京都ならではの情報、話題を発信しようと、番組づくりに取り組んでいる。


京都市聴覚言語情報センターが独自に制作


 聴覚言語障害センターが制作しているのは、KBS京都用に月1本(30分)、CS放送用に月2本(5分―30分)の番組。同センター地域福祉部主任の加賀弘一さんを中心に7人のチームで担当している。番組の内容は、老舗巡りなど、京都らしさを強く打ち出している。

 「目で聴くテレビ」がCS放送で始まったのは1998年秋。全日本ろうあ連盟と全日本難聴者・中途失聴者団体連合会などが中心になってCS障害者放送統一機構を設立、放送をスタートした。きっかけとなったのは、阪神淡路大震災だった。聴覚障害者の多くに、警察・消防の危険情報や緊急性の高い重要な情報が伝わらなかった苦い教訓から、手話と字幕による独自の放送をすることになった。

 放送は現在、日曜日を除くほぼ毎日。番組内容はニュース、イベント、グルメ情報、手話教室など盛りだくさん。月曜日のNHK「クローズアップ現代」など、地上波放送のニュース、スポーツ番組などに、独自に手話と字幕をつけて放送もしている。

 CS放送を見るには、専用のアンテナと受信装置アイドラゴンが必要だが、聴覚障害があり、身体障害者手帳を持っている人は、自治体の窓口に申請すると身体障害者日常生活用具として、受信装置の給付を受けることができる。この受信装置は、全国で現在9000台普及。同統一機構の河上和宏ディレクターは「身体障害者手帳を持っている聴覚障害者は全国に約34万人。番組内容を充実して、もっと多くの人に利用してもらいたい」という。

分かりやすさ目標に


設備の整ったスタジオで、字幕をつけるなどの編集作業が行われる(中京区の京都市聴覚言語障害センター)  またKBS京都では、2001年からCS放送を再編集して毎週土曜日の午前8時から30分間「目で聴くテレビ」を放送(火曜日午前八時半から再放送)。担当の池田和生ディレクターは「視聴者も増え、定着している。障害のある人もない人も楽しんでもらえる番組づくりを工夫していきたい」と話している。

 京都発の番組づくりに取り組む京都市聴覚言語障害センター内には、テレビ局にも負けないというスタジオがある。リポーター、カメラマン、手話通訳などのロケ班が撮影してきたテープは、このスタジオで編集される。手話は番組の司会・進行役が自ら行い、字幕は編集段階でつける。加賀さんは「カメラも編集もみんな素人だが、耳の不自由な人もスタッフに加わっているので、聞こえない人の身になって番組をつくっている。張り合いがある。今後もわかりやすい、最新の視覚情報を提供していきたい」とスタッフとともに意欲を見せている。