ともに生きる・福祉のページ
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認知症障害者
権利を守れ(2006/11/21)


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 認知症のお年寄りらに代わって財産や権利を守るために設けられた「成年後見制度」。最近よく耳にするのだが、実際にはどのような制度で、利用するには手続きはどうすればよいのか、気になる費用はどれほどかかるものなのだろう。また、この制度は現在、どれほど普及しているのだろうか。京都市長寿すこやかセンターが開いた「成年後見セミナー」に参加して、その基礎を学んできた。



成年後見制度を学ぶ



 セミナーは下京区のひと・まち交流館京都で10月の末に開催。講師は京都社会福祉士会の天岡憲子さん(看護師)が務めた。認知症の親をかかえる家族や、高齢者、福祉施設の職員ら114人が参加して会場は満員で、関心の高さをうかがわせた。以下は天岡さんの話の要点をまとめた。


【どんな時に必要】
79歳のB子さんは、高額商品の購入契約をさせられたが、認知症の症状があり、何をどのように購入したか分からず、商品も一部しか受け取っていない。年金ではクレジットの支払いができない。心配した長男の嫁が消費生活センターに相談をした。
認知症高齢者や知的・精神障害者は、こうした悪質商法の被害を受けやすい。しかし、成年後見人がついていれば、契約を取り消すなど悪質業者の被害から守ることができる。


【制度の中身は】
本人や親族などの申し立てに基づき家庭裁判所が選任する「法定後見」と、元気なうちに信頼できる人と任意後見契約を結び、意志能力がなくなった時に後見人になってもらう「任意後見」がある。法定後見は、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」に分かれ、それぞれ権限の範囲などが違う。

成年後見人の役割は、預貯金や不動産などの財産管理と治療、入院などの契約、費用支払いなどの身上監護に限られている。本人に代わって契約したり不利な契約の取り消しもできる。


【手続きは】
法定後見の場合、家庭裁判所に申し立てをすると、調査官による調査、医師による精神鑑定が行われる。そして審判で後見人が選任され、登記を経て後見が開始される。申し込みから審判までは一般的に3―6カ月程度かかる。


【費用は】
法定後見では、医師による精神鑑定が必要で、その費用が5万ー25万円かかる。そのほか診断書、戸籍謄本、収入印紙などの費用も必要。

成年後見人には、親族以外に、司法書士、弁護士などが選任されることがあるが、その場合、月額3万―5万円程度の報酬が必要になる。



 成年後見制度がスタートしたのは2000年4月。6年経過して、その利用状況は、NPO法人(特定非営利活動法人)ユニバーサル・ケアによると、全国で05年度、2万1114件(うち任意後見は291件)、累計でもまだ9万692件にとどまっている。京都市では、同628件、累計で2308件と少ない。天岡さんは4人の法定後見人をしているが、「高齢者や認知症の老人がいる家族などに関心は高い」という。しかし、利用したいと思っても、ネックになっているのが精神鑑定費用や報酬などの費用。また家庭裁判所での手続きも「敷居が高い」と感じる人が多いと見ている。

 天岡さんは「認知症高齢者が170万人もいる現状では、成年後見制度の役割は大きい。もっと普及するためには、公的補助をするなど制度を改善していく必要がある」と話している。