ともに生きる・福祉のページ
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認知症の在宅介護について学ぶ
大津で講演会(2006/11/28)


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 第13回世界アルツハイマーデー記念講演会in滋賀が、社団法人認知症の人と家族の会滋賀支部主催で、このほど、大津市内の滋賀会館で開かれた。支部会員の体験発表のあと、春日キスヨ・松山大学教授が「在宅介護に看(み)る家族という関係の困難と希望」と題して講演。家族構成の変遷とともに認知症介護の抱える問題を示し、高齢社会に向けて「ぼけても、一人暮らしでも、家族が看なくても、人間らしく安心して生きていける社会を」と、来場者へ語りかけた。


子ども急減で困難に


 同支部設立25周年を記念する催しで、同支部代表世話人の上田百合子さんは「先人の尽力とともに介護の社会化が進んできたが、在宅介護は今なお大変です。認知症の人が安心して暮らせる社会へ福祉、医療など関係機関の協力を求めながら、努力を続けます」とあいさつ。

 ついで会員の一人が父親の認知症を介護している体験を発表した。六年余りの在宅介護に母親と自分ら夫婦三人が掛かりきりで「毎日が戦場」のように悪戦苦闘。介護の講座、ビデオや電話相談など利用し、認知症の理解、症状への対応法を学んできた。今では家族の顔も分からず、歩くことも食べることも自力でできなくなった父を「元気な時よりも、今はいとおしい」と、人としての存在を問い直している。

 春日さんは自らの母親を介護した体験談を前置きしながら、介護保険制度の施行によって「家族だけで介護しなくてもいい、と心のリアフリーができた」「地域や住民参加とともに町づくりの方向が見えてきた」などと評価。
 その中で最近の大きな変化は2つあると指摘。第1に「痴呆(ちほう)から認知症」へ名称変更とともに、その理解が劇的に変化したという。高齢者の尊厳、自尊心を受けとめるケアにより問題行動が軽くなる、と症状への理解が進んできたという。

 第2の変化は、明治・大正から昭和ヒトケタの世代は子どもの数が多く、それ以降の世代では子どもが急減している、と家族構成の変化に注目する。京都や広島市周辺での聞き取り調査結果を交えて「90年代初めは高齢者が子どもや親戚の家を転々とするなど子ども側に介護するのに余力があったが、その後の世代は大半が子どもが1、2人しかいず、そこでの介護にはもはや余力はない」と高齢者介護をめぐる環境が人口学的に転換しつつあると指摘した。

さらに「認知症で一人暮らしになったとき、それを支えるキーパーソンが、居るだろうか?」と、新旧の家族状況を比較する。最近では同居していても高齢者は「家族内の一人暮らし」が目立ち、あるいは「家族の中で困った人を助けることができないなど格差社会が広がっている」と家族の力不足や弱点を懸念する。それでも「体験発表」にあるように家族の支えこそ最大の希望であり続けると再評価しながら、高齢者の急増へ備える施策の見直しこそ必要だ、と結んだ。

〔メモ〕認知症の人と家族の会滋賀支部
連絡先 TEL・ファクス 077(567)4565