ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
やすらぎトーク UP地域の力 暖流 見えない世界を生きる 統合失調症を生きて 福祉ニュース わたしの作品 テーマとーく
福祉ニュースから  <<2006年一覧  2007年>>

広げようノーマライゼーションの理念(2006/12/19)


写真

 障害のある人もそうでない人も、だれもが自分らしく生きようというノーマライゼーションの理念を考える第五回セミナーが先月、亀岡市の京都学園大で開かれ220人が参加した。セミナーは、川崎医療福祉大学学長の岡田喜篤さんが基調講演、ノーマライゼーションの理念実践国デンマークと京都の活動家らによる報告が行われ、最後に今年のテーマ「地方分権─暮らしやすいために」についての鼎談(ていだん)に耳を傾けた。


地方から発信を


 鼎談では、最初に南丹広域振興局長(前府保健福祉部長)の戸田雄一郎さんが、京都で推進してきた独自の取り組みを報告。福祉や障害者問題について課題が顕在化する中で、障害者福祉サービス等利用支援事業、ハート(まごころ)ショップの開設、施設経営相談などを実施し、当事者・現場・地域・行政などが連携を深めた実績を披露した。中でも、京都で5年前から開催を重ねているノーマライゼーションを考えるこのセミナーが、その理念を学び、課題に真正面から向き合って、全国に問題提起し続けている意義は大きいと位置づけた。

 続いて、ノーマライゼーションの父といわれるデンマークの行政官、バンク・ミケルセンの考え方を受け継ぎ、その後も同国内で活躍しているバンク・ミケルセン記念財団理事長の千葉忠夫さんが「経済大国でもないデンマークで、なぜノーマライゼーションが実践されているのか。それは生活大国実現を願う国民一人ひとりの強い意思と姿勢があるからこそだろう。日本では最近、キレる子供が増えたというが、昔はキレるといったら意味が違って、頭が良くて社会の模範になっていた子のことだった。多分、競争原理に基く教育の在り方が子供たちを変えてしまったのではないか。住みよい国にするには子供をしっかり育てることが大切ではないか。ここにいるセミナー参加の皆さんが、みんな国会議員になればよいのに。そして、真剣に国のこと、社会のことを考えられる人が集まれば、きっと国をよくすることができる。ノーマライゼーションの理念は、どこの国でも実現できるチャンスがある。意思と姿勢があればだ。京都からの発信をこれからも続けてください」と呼びかけた。

 そして、前回に続いて基調講演を行った岡田さんが発言。「デンマークは税金が高いが、必ず自分に戻ってくると国民は考えている。循環だと信じている。『税金をとられる』と思っている日本人とは大違いだ。このままだと、力の弱い人は抹殺されてしまうのではないかと心配する。皆さん、自分を愛そう。自分を大事にしよう。自分が大切だからこそ相手もきっと自分を大切にしてくれるに違いない。こうして相手を思いやる気持ちが出てくる」と訴えた。

 最後に戸田さんが「日本でノーマライゼーションの理念をさらに広めるために、地域・地方での取り組みがますます大切だと確信した。未来に向け、一人ひとりが連携し、それぞれの現場で役割を果たしていこう」と締めくくった。