ともに生きる・福祉のページ
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湖南でセミナー
地域ネット構築を(2007/01/23)


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 第3回「自閉症の人への支援セミナーしが」(滋賀県、同実行委員会主催)が、このほど、湖南市の甲西文化ホールで開かれた。「発達障害者支援法」の施行(2005年)とともに全国各地の「自閉症・発達障害者支援センター」を中心に取り組みが始まっている。今回は「新たなネットワークにより、より質の高い支援を」と計画され、甲賀福祉圏での支援の実例報告や講演、シンポジウムが行われた。


広げよう自閉症支援の輪

 冒頭、滋賀県健康福祉部の上原正男次長は「滋賀県は全国に先駆け、自閉症支援センターいぶきを設置し、平成17年度から発達障害者の総合的支援へ3カ年モデル事業を進めている。セミナーを施策の充実、課題解決へ役立てたい」とあいさつ。

 ついで、佐々木正美・川崎福祉大学特任教授が「自閉症/思春期以降の不適応」と題して講演。自ら自閉症とのつきあい40年について、最初の10数年は不適切なことや間違いや、不理解による相互パニックまで起こしたが、米国ノースカロライナ大学が研究、開発したTEACCH=自閉症及び関連するコミュニケーション障害の子どもの治療と教育=を知って、大き間な間違いをしなくなった、と振り返った。

 さらに発達障害のある人のことばとして「私は絵で考える。言葉で考えることは困難」「私は一度に一つの感覚しか使えない」などと紹介。支援のため「一人一人の声を聞き、なによりも適切に理解することがスタート」とし、「優れた長所・機能・能力を発見して支援する。また感じたり理解する上でのギャップを丁寧に埋めることが教育、支援の本質」と説いた。

 三雲養護学校の仙石龍圓さんは、同高等部から昨春卒業し、就職したAさんの事例とともに学校教育から地域へ移行する支援計画の実状を報告。続くシンポジウムは「甲賀福祉圏における学校教育から地域支援ネットワークへ」とのテーマ。ここでは「甲賀地域障害者サービス調整会議」に甲賀、湖南両市はじめ養護学校、医療関係者、福祉サービス事業者、ハローワークなど関係団体がネットワークを形成している。

 パネラーの西谷淳さん(湖南市役所)は、同市が障害者が地域で生き生き生活できるための自立支援の条例を制定し、障害の早期発見から保育・教育、生活まで支援を規定。既に活動を始めていると報告。また雇用支援ワーカーの田中郁共さんは「以前に比べ障害のある人を地域の企業が受け入れるところが増えてきた。Aさんのように地域で働くことを目指して、なにが必要なのかプログラムして、力を付けることが大事」と話した。医師本谷研司さんは「発達障害の症候群の知識が増えてきており、そこからの切り口や考え方を新たに採り入れる医師が出てきている」とコメント。

 また県発達障害者支援センターの高松光照さんは「一生涯一貫した支援のために各ライフステージごとに変化する支援機関への包括的な支援」と自らの役割を示し「県内七つの福祉圏にネットワークの構築を促進し、支援者とともに考えていく」と話した。最後に佐々木教授は「正しい理解とともに、いい連携によりいい仕事ができ、心からの励みになる」と同圏の進展を評価した。