ともに生きる・福祉のページ
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転換期の地域福祉をどう担うか
京都で福祉学会(2007/01/30)


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 近畿地域福祉学会の平成18年度大会が昨年12月、京都市の同志社大新町キャンパス校舎で開かれた。近畿各地の大学、施設、団体などから約150人が参加。「地域福祉の視座―その進展のための課題を探る」をテーマに、障害者自立支援法の施行、介護保険法改正、地方分権改革などにより転換期にある地域福祉について議論した。その中で、障害者自立支援法施行後の利用者の厳しい実情や地域の独自の取り組み、ユニークな事業などが報告され、パネルディスカッションで地域福祉をどう担うか活発に意見が交わされた。


広げよう自閉症支援の輪

 パネルディスカッションでは、最初に精神障害者地域生活センターこのゆびとまれ(湖南市)所長の金子秀明さんが、障害者自立支援法施行後の利用者、施設への影響について報告した。

 4月から原則一割の自己負担となったことから、月3000円11万5000円の工賃をはるかに上回る自己負担となり、退所者が出たり利用を抑制するようになっている。利用者からは「働きに行くのになんでお金を取られるの」という素朴な疑問と不満が広がっている。また、施設経営では「日割り支給」による大幅な減収と、その対応策として職員の人件費引き下げ―という実態が説明された。

 大阪府社会福祉協議会事務局長の佐藤貞良さんは、地域福祉を支えていくために組織化活動の重要性を強調し、「組織化活動を評価する基準の研究・開発が必要」と訴えた。奈良市福祉総務課の北森重信さんは、奈良市役所の地域福祉計画策定から推進にいたる庁内の体制づくりを説明。「住民座談会の開催などを通した住民の目線による計画点検が大事」と話した。また、佛教大教授の岡崎祐司さんが、地方分権改革と自治体の社会福祉への取り組みの変化などについて説明を加えた。

 こうしたパネラーの発言に対して、会場から熱心な質問があり、意見交換した。金子さんは、精神障害者を支えていくには「専門職だけでは難しい。地域の人々の応援が欠かせない」と地域福祉の構築に向けた取り組みの大切さを語った。最後に岡崎さんが、地域福祉を進めていくためには「地域の福祉ニーズを掘り起こし、課題を共有することが必要。そして、社協やNPO(民間非営利団体)などが一緒に取り組むべき」と、参会者に向けて話した。

 同学会では、このほか特定非営利活動法人丹後福祉応援団理事長の三井健史さんと、市原野社会福祉協議会会長の岸野亮淳さんの2人が、現場からの実践報告をした。

 三井さんは「福祉のコンビニを目指して」と題して、同応援団が取り組んでいる2トントラックの荷台を理美容室に改造、老人ホームなどを定期的に巡回している移動福祉理美容事業やふとん乾燥車、デイサービスセンター、介護タクシーなどユニークで多様な活動を紹介。「お年寄りや障害のある人たちのニーズにこたえ、行政や施設では出来ない事業を進めていきたい」と意欲的に語り、注目を集めていた。