ともに生きる・福祉のページ
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園芸で福祉の町を
下京で先進事例の発表会(2007/02/27)

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 園芸によって福祉の増進を―と特定非営利活動法人(NPO法人)京の園芸福祉研究会は、このほど「2006年度園芸福祉活動実践事例発表会」を、京都市下京区のひと・まち交流館京都で開いた。京滋と広島で取り組まれた事例五件が発表された。また、昨年初めて欧州の園芸福祉の視察に派遣した京都府の担当者から先進国の実情を報告し、施策化への検討課題などが伝えられ、園芸福祉普及への動きをうかがわせた。


収穫の喜び 生きがいに

  同研究会(会員約200人)はNPO法人日本園芸福祉普及協会(本部・東京)の地域事務所で、2003年設立、05年にNPO法人として認証されている。最初に溝川長雄理事長が全国の活動状況を報告。同協会が認定する初級園芸福祉士の養成講座が昨年、30会場で開催され、受講者が約1000人に達したほか地域での園芸ネットワークの形成、ポスターによる啓発などの実績を紹介した。

 事例発表では藪下修司郎さんらが昨年10月の「山科区誕生30周年記念事業」に参加し、ワークショップにより花一杯運動の目標設定から苗作り、区役所前の花壇の造成まで展開。この間、市民40人が加わり、区内のさまざまな団体と連携して活動を継続中と報告。ついで西京区の桂坂花の輪の会の山口和枝さんが五年前、地域の園芸好きな主婦22人が集まって小学校の空き地にコミュニティーガーデンを作っていると紹介。京都市に地域パイロット事業の指定を受け、小学生らの花壇作りを促進しながらガーデン・フェスタを開催し、地域住民が園芸に親しむとともに福祉の町作りにつなげていきたいと語った。

 一方、彦根市の介護施設を運営する企業アインズの中谷公一さんは「介護施設での園芸福祉の環境づくり」をめざす取り組みを紹介。昨年夏から同社スタッフが介護施設の庭づくりに着手。もう一カ所他の施設では利用者ともどもに野菜類を栽培できる農園芸地を造園していると報告。また高槻市の街かどデイハウス「晴耕雨読舎」の伴実和子さんは、82歳の女性の新たな生きがいづくりに園芸を推奨し、その機会を提供。野菜の世話から収穫の喜びを感じたことをきっかけにして、生活面での積極性が回復した、と報告した。

 最後に府農林水産部の芦田哲也さんが「ユニバーサル園芸で 〜植える美ING京都〜」と題し、園芸福祉の現状から課題、目標などを検討しながら、今後、幅広い社会活動の展開が可能との見通しを明かした。ついで今後、ユニバーサル園芸のサポーターの育成、活動拠点の整備、授産施設入所者の社会参加の促進や健康・仲間づくりや生涯学習の場としての京都版コミュニティーガーデンづくりという施策の構想試案を示した。

 また、スライドとともに、欧州の先進地の視察事例を紹介。授産施設に就業する人のうち園芸の希望者によって運営されているオランダの地域社会授産施設では障害者250人を雇用し、トップクラスの商品を生産している例や熟年から高齢者まで利用する英国ロンドンの市民農園が地域の緑地政策や都市環境に適合していると指摘。この両国と並んで世界の3大園芸国とされる日本の伝統的な素地を生かした園芸福祉の進展の可能性を示唆した。