ともに生きる・福祉のページ
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セクシャルヘルス、発達障害、居場所、依存
京で支援探るシンポ(2007/03/13)

親しくなりたい でも怖い…「人間関係難しい」

写真 ユースシンポジウム2007「“課題を持つ”若者への支援を考える」(京都市、京都市ユースサービス協会主催)が、このほど京都市の中京青少年活動センターで開かれた。セクシャルヘルス、発達障害、居場所、依存という4つの課題を設定し、その理解とともにサポートのあり方を考えるのが狙い。若者の問題を広くとらえる企画に定員を超える参加者があり、地元から東京、北海道など国内各地まで広がりが見られた。


若者の課題、理解を

 シンポジウム「現代の若者が抱える課題について」の最初のパネラー、斎藤真緒さん(立命館大助教授)は「セクシャルヘルスとリプロダクティブ(生殖)ヘルス」の視点から話し出す。20歳代前半をピークとして増加する性感染症、20、30歳代でのエイズの深刻化、さらに20歳代での妊娠の人工中絶の増加など課題を明かした。一方、世代を超えた性的なコミュニケーションが不足しているので若者の自己決定へ情報の提供が必要とし、ついで恋愛中の暴力を注目して「親から恋人への依存」は表層的な親密性への安住では? と疑いつつ、大学生の恋愛観の調査やグループ討論を始めたと報告。

 長倉いのりさん(京都市児童相談所)は、発達障害とは「発育の速さ、量、方向性などで定型発達とは違う発達の仕方をする」と説明。自閉症やアスペルガー症候群などの障害者への施策が従来、不十分だったことから「発達障害者支援法」が2005年に施行されたと解説。「だれでも特徴を持っているように、コミュニケーション障害でも一人一人違う。障害特性を理解し、慣れていくことが支援に結びつく」と助言した。

 ついで発言した町田弘樹さん(京都オレンジの会)は10年間にわたるひきこもり経験者。「ひきこもりは全国で80万から100万人と言われ、きっかけは多様で、時期も小学3年生から20年以上という人まである。最近は不登校からリストラまで10代から50歳代まで広がっている」と報告。自らの体験を振り返り「引きこもって最初の一年は気楽になったと思っていたが、しだいに、このままでいいのかという自責の念が強まり、恐怖心だけが残った」と告白。その後さまざまなかっとうの末、仲間が集まる居場所に出かけ「心を和らげることができた」。現在は就労支援などのカフェを運営し、サポートに関わっている。

 最後に田中研三さん(保護観察官)は「依存症と依存は意味合いが違う」と前置きし、生まれた後の母親への依存はじめ依存は広くあり、そのなかで若者は大人へのプロセスとして身体、精神、経済的自立と次々に課題が現れ、「他者との関係性―依存がなくなることはない」と指摘した。田中さんが担当するチャイルドライン京都での最近の電話相談では「自分がどんな存在なのか? 自己の存在と他者との関係性に悩んでいる」という内容が多いと説明。現代の若者は他の人と親しくなりたいが、そのプロセスの中で傷ついてしまう。人と関わることが怖いと逃避する間隙(かんげき)に薬物依存が出てくるのではないか、と深刻な内面の状況が報告された。

 そのあと各パネラーごとの分科会に参加者が分かれて、それぞれの関心を寄せる課題についての討論を深めた。