ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる
写真
自身の伴奏付きで会場に流麗な歌声を響かせる柱本さん。実際に「こころを聴く」体験をした驚きと感動を語り、ともに生きる時間の大切さを訴えた(京都市中京区・京都新聞文化ホール)

京都新聞社会福祉事業団
「ともに生きる」フォーラム(18/04/10)



 ひとり一人の命を尊び共に助け合って生きる社会の構築を考える京都新聞社会福祉事業団主催の「ともに生きる」フォーラムが3月25日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。今回は3人の専門家講師を招き、急速に増えてきた男性たちによる介護のあり方や、公的年金制度の維持と現状をめぐる問題点などを語ってもらった。会場には中高年の人たちを中心に約100人が詰めかけ、メモを取るなどして熱心に聞き入った。最後のミニコンサートを兼ねた講演では、住職で歌手の柱本めぐみさんが美しい歌声と演奏を披露して会場を魅了した。



こころを聴く
明覺寺住職、歌手 柱本めぐみ(藤田めぐみ)


 大学で声楽を専攻し演奏活動を始めていた頃、お寺の息子と出会い、寺に嫁ぎました。子育てに追われる中で、寺とは何かと考えるようになり得度はしましたが、私の気持ちの中心は歌の世界を広げていくことにありました。

 そんな私に思いもしなかったことが起こりました。住職である夫がガンになり、さらに義父も義母も重い病にかかり、家族が相次いでこの世のいのちを終え、私はひとりで寺をまもることになりました。

 いのちと向き合う日々、私の支えになったのは、何よりも皆さまのこころとの出会いでした。

 夫が入ったホスピスでコンサートを頼まれました。フロアは患者と家族の方でいっぱいでした。季節は秋。唱歌「もみじ」を「秋の夕日に…」と歌い出したとたん、皆さまが泣きだされたのです。それを見て私も目の奥が熱くなったときでした。「こころ」が聴こえてきたのです。それは「私の力ではなく、聴いてくださっている方々のおこころに支えていただいて歌っているのだ」と気付いた瞬間でした。やがて涙が穏やかな笑顔に変わりはじめると、ともに今日を生きている喜びと感謝の念でいっぱいになりました。

 いただいた今日という大切な一日。いつも、つながるこころを大切にしていきたいものです。

はしらもと・めぐみ
歌手名・藤田めぐみ。浄土真宗本願寺派、明覺寺(京都市下京区)住職。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンと幅広く活躍。唱歌を見直す活動にも取り組む。