ひとり一人の命を尊び共に助け合って生きる社会の構築を考える京都新聞社会福祉事業団主催の「ともに生きる」フォーラムが3月25日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。今回は3人の専門家講師を招き、急速に増えてきた男性たちによる介護のあり方や、公的年金制度の維持と現状をめぐる問題点などを語ってもらった。会場には中高年の人たちを中心に約100人が詰めかけ、メモを取るなどして熱心に聞き入った。最後のミニコンサートを兼ねた講演では、住職で歌手の柱本めぐみさんが美しい歌声と演奏を披露して会場を魅了した。
公的年金制度は、日本人のともに生き支え合う精神を基に設計されています。現役世代が保険料を納めて高齢世代を支え、これを世代間で順次、受け継いでいく形です。年間に総額55兆〜57兆円が給付され、地域経済を支える基盤ともなっています。
負担と給付の仕組みは、負担できる人に等しく負担してもらうのが原則です。所得の高低にかかわらず、1階部分の基礎年金は同じ額を給付。所得に比例する2階部分の厚生年金も所得が高い人ほど2倍にならないように配慮。高い人から低い人に資金を動かす再配分の設計です。厚生年金を受け取れる60歳以上で、一定以上の賃金がある人には、給付を停止して余ったお金を再配分しています。
2004年の大改革で、当時の給付水準を維持すると現役世代の厚生年金料率を約23%に、国民年金は2万円超の負担にせざるをえない試算が出ました。過酷なので料率は18・3%、国民年金も約1万7千円を上限とすることに決定。一方で給付水準に社会経済動向を反映させ、自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)を導入しました。給付額を順次下げていくこの調整期間は約20年のはずでしたが、現役世代の賃金が低下傾向をたどり、期間は約30年に延ばされています。
今のままでは年金給付額は20―20年かけ2割ほど下がっていく予想ですが、実は個人個人が年金を増やす方法もあるのです。自分の意志で受給開始を遅らせて将来の自分に仕送りする方法です。
標準的な65歳では受給せず、1年遅らせると年間8・4%、2年なら16・8%も受給額を増やせます。いま、65歳男性の平均余命は19・55年。仮に70歳で受け取り始めても14〜15年は生きるのだから一考に値するはずです。
もう一つは、主婦パートや高齢者の短時間労働者で、厚生年金未加入の人に入ってもらう方法です。社会保険の適用拡大策で可能になりました。多数が加入すれば、基礎年金の給付水準は上昇。加入者が働き続ければ、自分の厚生年金受給額も増えます。支えられる側が支える側に回ることで、年金制度は安定して元気さを取り戻すのです。