ともに生きる・福祉のページ
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やすらぎトーク

「子育ては柔軟、臨機応変に」
 環境を保全し 次世代守る

京都弁護士会会長 浅岡美恵さん(2006/06/06)


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 いまの時代、若い女性が子どもを生み、育てるのを不安に思うのは無理からぬことです。ここ10年ほど、親の所得による階層化が強くなっています。教育にお金がかかる時代になっているし、将来に明るい展望を持てないと、多くの人が感じている。でも、子どもを持つことはとてもいいです。苦労はあるけれど、自分が鍛えられます。子育てというのはワンパターンではありません。柔軟に、臨機応変にやることです。

《今春、京都弁護士会の会長に就任した浅岡美恵さんは、京都大を卒業して1972年に弁護士登録。スモン訴訟や水俣病訴訟にかかわってきた。当時はまだ女性の社会進出が始まったころ。弁護士にも女性は少なかった》

 私が弁護士になったころ、京都弁護士会員は188人。そのうち、女性はたった4人。私が5人目でした。現在は全体で約400人になり、女性も60人近くに増えています。昔は裁判官も書記官も女性が本当に少なかった。
 86年に男女雇用機会均等法ができたころから、女性の社会進出に大きな変化がありました。職場として、司法界は女性の参加が最も進んでいるところだと思います。資格試験に合格すれば、最近では採用時の差別はほとんどありませんから、女性が仕事をしやすい職場です。民間企業でも女性の能力活用が進み、職域が拡大しました。でも、パート、アルバイトなど不安定な雇用が多く、出産・育児に伴う問題など女性のかかえる大きな問題は依然として解消されていません。
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《浅岡さんは男女三人の母親。弁護士活動をしながらの子育ては、苦労が多かったと振り返る》

 仕事を続ける上で、保育所には大変お世話になりました。当時珍しかった夜間保育のある保育所に子どもを預かってもらいました。スモン訴訟では、厚生省前で100日も患者さんたちと座り込もしました。私も東京へたびたび出かけなければならず、保育所や奈良に住む母親にずいぶん助けてもらったものです。
 女性が子育てをしながら仕事を続けるには、育児・介護などの制度が充実している、夫婦間の理解がある、社会的な支えがあることが、三位一体となって改善される必要があります。私は個人的にも社会的にも恵まれていました。そのことに感謝し、仕事で社会にお返ししていきたいと思っています。

《近年は気候ネットワーク代表として、地球温暖化防止に精力的に取り組んできた。今度は司法改革が進む転換期に、弁護士会をリードする役割を担う》

写真  母親って環境問題に敏感です。命の大切さが感覚でわかるし、子どもの成長のスパンで先を考えることが身についています。スモンや水俣のように、人への健康被害が現れてからでは取り返しがつかない。環境への取り組みは、次の世代を守ることであり、我が子を守ることと重なっているんです。
 司法界は今、大転換期にあります。これから毎年、3000人の法律家が誕生することになっています。そのほとんどが弁護士になります。これをさらに増やそうとの声もありますが、そんななかで、資格を取っても法律家の仕事に就けない人が相当出てくるでしょう。司法改革というのは、国民が安心して利用できる仕組みを作ると同時に、法曹人が誇りを持って仕事が出来るようにしなければいけないと思っています。


写真=公害問題の教訓に「被害が出てからでは遅い。早く行動していれば」との思いがある〈写真・遠藤基成〉

(次回は7月2日 シーズネット代表 岩見太市さん)▲TOP