京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●やすらぎトーク
がんばカンパニー施設長
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表情は明るい。規模を拡大し働く人をさらに増やす計画だ |
《がんばカンパニーでは50人ほどが働いている。今期の売り上げは昨年来の不況のため下がったが、1億3500万円を見込む。障害のある人の月収は1人平均12万円近く、その高さで国内はもちろん韓国からも注目を集め、視察の応対に追われる毎日だ。多い人は20万円ほどになり、親を扶養している人もいる》
最初からこうではなかったんです。売価の3倍近いコストをかけて商品を作っていたときもありました。実家の田畑を担保に借金して赤字をしのいだことも…。でもそれが転機になりましたね。頑張って利益を上げんと給料は入ってこないという当たり前の実感をみんなが持ち始めたと思います。
でも特別のノウハウがあったわけではありません。障害があればできないことは多いのですが、一緒に働きながらよくよく見ていたら、ああこういうことの方が向いているなとか、道具などを工夫すればできるようになるなとか、そんなことが分かってきます。できないことではなく、できることを日々発見していく、それを息長く積み上げていく。
給料は時間給にして、長時間働き続けられない人が短時間でも働けるようにしました。いろいろ工夫して、できなかった人ができるようになると周囲もその人を当てにします。本人は働きがいと喜びを感じて責任感が出てきます。技術も向上します。
すると「いてもいなくてもいい人」がいなくなります。そうやっていい循環をつくると業績は上向いていきました。
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働きやすいように、その人だけのために工夫をこらすんです(写真・遠藤基成) |
ここのような場所がなくなるのが理想ですね。これまでは囲い込む福祉だったと思うんですよ。日常生活で障害のある人にあまり出会わないのはおかしい。存在しているはずの人が見えない社会になっている。会社に行っても商店に行ってもどこに行っても出会うのが自然なはずです。
ここでやったように時間をかけてきめ細かい工夫をすれば、どこでも障害のある人が働けるようになると思います。そんな商いのノーマライゼーションが進めばここは不要です。それを夢見ています。「商い」には「飽きない」をかけてるんですよ。飽きることなく粘り強く頑張ります。
なかざき ひとみ
1964年滋賀県生まれ。県立水口高校卒業後、介護職などを経て障害者作業所「今日も一日がんばった本舗」へ、95年からがんばカンパニー施設長。
大津市の社会福祉法人「共生シンフォニー」常務理事。