ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

自由な空間で元気を蓄積
生きづらさ抱える子ら支え(23/01/16)

朝倉 美保あさくら みほさん


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くらら庵の2階で、スタッフの堀池洋子さんと子どもたちに寄り添う朝倉美保さん(右)=昨年12月23日、京都市中京区
 玄関を入ると、なんだか天井が騒がしい。ドスン、バタンの音に続いて、2階から子どもたちの元気な声が降って来た。

 京都市中京区のJR円町駅にほど近い「くらら庵」は、生きづらさを抱える子どもや若者の居場所として2021年5月に開設された。朝倉美保さん(43)が代表を務めるNPO法人Reframe(リフレーム)が、2階建て民家を借りて運営。不登校や発達障害の子どもを中心に25人の利用登録があり、一日平均8〜10人が集まる。

 「自由に遊べる場所にしています。いつ来ても、帰ってもOK。うるさい規則は一切ありません。ここで楽しいことを見つけ、まずは元気になってほしいのです」

 朝倉さんは、自身が生きづらさを感じて育った。大学を出て就職したが、24歳でうつに陥る。悪化と回復を繰り返し、仕事を何度か変えた10年後、医師から「うつの根本原因は、注意欠如・多動症などの発達障害」と診断された。

 「診断がついて納得がいきました。思ったらすぐ行動に移す自分の性格。ならば、逆にこれを強みに生かし、当事者の1人として発達障害の子どもを持つ親御さんのために何か役に立ちたい。ずっと温めていた思いを実現させたのがくらら庵です」。不登校の子どもは低学年になるほど行き場が少なく、くらら庵のような居場所は地域でも待ち望まれていた。

 平日の開設時間は午前10時〜午後6時。午後3時までは不登校の児童たちが自由に過ごす。3時以降は、小中高生たちの放課後学習などに充てる。日曜日はイベントや「親の会」の会場になるが、にぎやかなのは第3日曜。子ども食堂の開催日で、全室満杯の約40人が集まる。

 運営主体のReframeは「公教育機関に行かなくても自分らしく生きられる社会づくり」などを理念に掲げ、朝倉さんと友人の副代表、美濃羽真由美さん(43)の2人で発足させた。ボランティアスタッフ約50人(登録数)が入れ替わりで支え、不登校問題の研修や、発達障害にかかわる情報の発信にも力を入れている。

 くらら庵の隣にはもう一軒、朝倉さんが1人で講師を務める学習塾が建つ。16年に書道教室として開き、翌年から発達障害の小中高生を主な対象に全科目を教えるようになった。中には不登校の子どもたちもいるので、朝倉さんはその心の内を見続けてきた。

 「学校での学習になじめない子は、周りに理解されず傷つき心のエネルギーを失っていることがしばしば。遊びを通した交流や学び合いに寄り添い、心のケアを続ければ必ずエネルギーを蓄積できるようになります」。くらら庵の2階で元気な足音を響かせる子どもたちも、当初は精気が乏しかった。自由に遊んで学ぶうち、1年が過ぎると見違えるように元気を取り戻したという。

 地道な取り組みが評価され、くらら庵は公立小中校から教育連携の対象(フリースクール)に認定されるようになった。現在は京都市内外の10校と連携。子どもたちのくらら庵利用日数は、各校の出席日数に算入されている。

 「塾と自由な遊び場はできました。次は、特定の体験や勉強ができるカリキュラム付きの居場所を作り、子どもたちの選択肢を増やしてあげるのが目標です」