ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

「生き直し」へ互いの支えに
京都の断酒会をまとめる(23/05/29)

南 重純みなみ しげずみさん


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会員と談笑しながら記念大会の資料を整理する南重純さん(左端、6日、京都市下京区)
 京都府断酒平安会の創立50周年記念大会が5月初め京都市内で開かれた。南丹地域以南の府内をエリアに、アルコール依存症の克服を目指す自助グループで、会員約150人と家族会員約100人を数える。地域断酒会としては全国で最大規模で長い歴史を持つ。

 2年前から会長を務める南重純さん(67)は「依存症は、自分ではコントロールできない病気、コントロール障害とされる。誰でもかかりうる厄介な病気だが、回復できる病気ということをもっと知ってもらいたい」と力説する。「医療的には直接なおす薬はない。通院治療と抗酒剤、断酒例会出席が、3本柱とされる。そこに会の役割、意味もあるのです」。

 例会はある各支部それぞれが、ひと・まち交流館京都(下京区)など地元の公共施設を借りておおむね週1回開いている。午後7時から9時が定番。「過去には酒を飲んでいた時間に集まって話をしようということ。何年やめていても一度飲むと後戻りしてしまう。心の病(やま)いだが、肝硬変など体の病気につながり、最終的には死にも至る病気なので、皆で支え合って心をコントロールしていく会です」と南さんの前の会長で現事務局長の栗山一郎さん(59)。南さんと二人三脚で会を支える。

 最近は、女性や主婦の会員もいるので昼間の例会も開かれている。年齢層は、会の初期は中高年が多かったが、最近は若年層も増えている。「コロナ禍」の中で在宅勤務が増え、ついアルコールに手が出る人も出てきたという。

 例会では参加者が自身の体験や思いを率直に語り合い、耳を傾ける。身体的病気をかかえながら精神的な病いを克服しようとしている人も多い。依存症への知識と対処法を身に付け、酒を止め続けるのが目標だ。15年前に同会に入った南さんは「会の活動や役職を続けるのは、会のためというより自分のため。酒をやめ、会の活動を通じて新たなスキルを身につけたり学ぶこともある。新たな生き方につながる。相互に恩を送るのだと思っています」と述懐する。

 自身は居酒屋をしていたが、約20年前に離婚を引き金に酒に浸り依存症に。重病を得て断酒を決意。居酒屋をやめ、母親の病気でホームヘルパーの手助けを受けたことで、自らヘルパー資格を取り働いた。会に入ってから、定時制高校にも通い卒業したという。

 家族も心理面も含め影響を受けることが多いので、家族会員も重視している。本人はまだ参加せず家族が参加しているケースもある。南さん自身も姉の支えで踏みとどまれた経験から「家族も笑顔になろう」と運営している。

 冠婚葬祭などの前後に後戻りするケースもあり、例会出席が歯止めになっている。出来る場合には、周囲にこの病気だと伝えておくことで抑止になることも。

 会では市民セミナーを年2回、行政機関や支援者も交えて開く。「生き直しが出来る病気。過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる。未来の自分を作っていこうと訴えてます。この病気を知ってもらい、活動のすそ野を広げていきたい」。節目の年にその思いを強くしている。