ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

一緒に活動する姿勢で
障害特性に応じて支援(24/03/19)

佐々木 輝ささき  ひかる さん


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利用者の表現活動を見守る佐々木輝さん(京都市右京区・NPO法人加音西京極作業所)
 斬新な色使いや大胆な描写のアート作品が事業所内に飾られ、来所者の目をひく。京都市右京区のNPO法人加音が運営する西京極作業所。ここで、サービス管理責任者の佐々木輝さん(33)は、障害のある利用者の創作活動を支えている。「作品をつくる利用者さんたちは、発想がとても豊か。私たちではなかなか思いつかないようなデザインで、日々さまざまな気づきをもらっています」

 同法人は、障害者や難病患者の支援活動に携わる人たちが2009年に設立。就労継続支援B型事業所を開所し、現在は生活介護事業も展開する。箱折りや清掃などのほか、創作活動や自主製品づくりに取り組んでいる。

 法人の特色である創作活動は、仕事の合間に音楽や絵を描いて楽しむ「遊び」から始まった。才能を発揮してコンクールで入賞する利用者も出てきたことから、作品展を開くなど発表の機会も設け、活動に力を入れるようになった。

 佐々木さんは、「人の役に立つ仕事がしたい」という思いで福祉を学び、10年前に入職。障害がありながら地域で暮らす人たちと出会い、「こういう場所で一般に働きたい」と思うようになった。それまでは障害のある人と関わる機会もなく、最初はコミュニケーションに戸惑いもあったが、「相手を知っていく」ことの楽しさに惹(ひ)かれていった。

 加音の自主製品は、ベストセラーの靴の匂い取りのほか、ポストカード、リングノートなどさまざまだ。利用者のデザインをもとに職員がつくったり、嵯峨美術大の学生や民間企業などの協力で製品化したり。「自分の気持ちをうまく言葉で表現することが難しい人が多く、絵を通して発信できることは社会参加になる。製品として買ってもらえると、利用者さんのことを広く知ってもらえるし、工賃増にも繋(つな)がります」

 大事にしているのは、利用者が主体となって活動できる場づくりだ。「それぞれの人の強みを生かせる活動を見つけるのが、大きな役割」。また、安心して気持ちよく過ごせる環境づくりも欠かせない。「そのためには、利用者さんの特性を知り、スタッフが共通認識をもち、チームで支えることも大事」

 一人一人に合った環境や仕事を、ちゃんとつくれているだろうか―と、自分自身にいつも問いかける。折にふれて立ち返るのは、「障害特性に応じた支援、仕事を通じて社会貢献、地域に根差した施設」を掲げる法人の理念だ。

 気持ちの表現が難しい人とのコミュニケーションは手探りだが、その人の特性や表現方法について理解できた時に喜びが込み上げる。「サインを読み取れたり、僕が自分なりに考えて試した方法で落ち着かれたりすると、少し近づけたかなと思えてうれしくなる」

 今までも、これからも変わらないのは、支援者が指導するのではなく「一緒に活動する」というスタンスだ。支援はもちろん必要だが、利用者から学ぶことも多い。「この職場にいることで、自分にはない感性や個性をもつ人たちと仕事や活動をすることができる。その環境が、とても魅力的だと感じています」

(フリーライター・小坂綾子)