ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

心身の不調、アートで回復

2020.08.03

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「りんく・りんく京都」代表/金崎 裕美さん (アートセラピスト)

「りんく・りんく京都の輪を全国に広げ、より多くの人をアートセラピーで癒やしたい」と語る金崎裕美さん(7月21日、京都市中京区)

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

 絵画や造形などの創作活動を通じ、心身の不調や障害に悩む人たちの回復を図るアートセラピー(芸術療法)に取り組んで20年近くになります。

 初めは専門家に付いて教わり、後に大学で心理学を学び自分なりの療法を追求してきました。「りんく・りんく京都」(京都市中京区)は、相談会を開くなど、あらゆる人を対象にアートを介して心と身体が生涯、健やかに成長するのを支援する団体です。最近、活動は停滞気味でしたが、新しいカリキュラムで今秋の再始動へ向け、準備を進めているところです。

 アートセラピーは音楽や演劇、ダンスなど多様な芸術表現が用いられます。表現の巧拙は問われません。作品を通じて周りの人と話したり、楽しさを分かち合うことが何より重要です。寄り添う私たちは、心の安定や活気を取り戻すお手伝いをします。

 心の居場所を失ったり、生きづらさを感じている人の多くは、自分に否定的です。創作中の気持ちや仕上げの充実感などを率直に話し合うことで、胸のつかえが吐き出され安心感が生まれます。これを続けていくと自己否定も解消。「自分は今の自分でいてよいのだ」と、心が切り替われば元気を取り戻し表情も変わります。

 「りんく・りんく京都」の活動で、3年間自宅でうつを続けた女性を支援したことがあります。1人では電車にも乗れません。それでも絵を描き、ダンスや詩作にも挑み人前で説明、発表する訓練を2年重ねた結果、自由に表現する楽しさを覚え心の切り替えに成功。職場復帰、さらに結婚も果たしました。自己否定する彼女に言い続けたのは「違う考え方もあるよ」。別の選択肢を示すのもアートセラピストの役割なのです。

 私は大阪の専修学校でファッションデザインを学んだ私は、30歳で、大阪と京都にトールペイントの教室を開きました。生徒さんの中に赤い絵しか描けない人がいました。悩みが色に出るのです。秘めた悩みを相談してくる人もあり、アートセラピーを意識したのはそのころでした。

 相談に安易に乗らず誠実に対応するには「心理学が必要だ」と思い立ち、東京福祉大の通信制課程に入学しました。育ち盛りの3人の子どもを1人で抱えて学ぶのはきつい日々でした。昼間は絵画教室で教え、夜は東京や名古屋のスクーリングに夜行バスで往復したこともありました。

 卒業時に認定心理士の資格が得られ、国立病院機構舞鶴医療センター(舞鶴市)の精神科で4年間働けたのは幸運でした。患者さんと毎日、接することができアートセラピストとして貴重な体験になりました。現在は宇多野病院(右京区)に非常勤で務め神経心理検査、心理療法などを担当しています。

 絵画と心理学に加え医療現場に身を置いてみて、アートセラピーの力を再認識しました。「りんく・りんく京都」の輪を、全国に広げていくのが次の目標です。

かねさき・ひろみ
1963年、京都市生まれ。大阪モード学園教員を経て絵画教室を主宰。東京福祉大心理学部に在学中の2009年、アートセラピーなどを施す任意団体「りんく・りんく京都」を開設。11年から国立病院機構・舞鶴医療センター、現在は同・宇多野病院で勤務。今春まで研究生として京都大大学院医学研究科に在籍。心理療法士、芸術療法士。