ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


出会いが広げた活動の幅

自由律俳句・折り紙・傾聴ボランティア
近岡 スガノさん



 長岡京市域でボランティア活動を続け22年になります。「自由律俳句」から「折り紙」、1対1でお話を聞く「傾聴」へとレパートリーを広げてきました。


「ボランティアで教えたり慰めているつもりが、逆に教えられ癒やされることが多い」と話す近岡さん(3月22日、長岡京市神足2丁目・長岡京市社会福祉協議会ボランティアセンター)
 高齢者施設や学校、自治会、個人宅などに伺い、教えたり慰めたりしているつもりが逆に、教えられ癒やされることの連続です。「楽しさを一番に、飾ることなく自分をさらけ出し、相手の方と心でつながり合う」。そう自分に言い聞かせ、ここまでやってこられたのは、支えてくださった多くの人たちのおかげと感謝しています。

 ボランティアを志したのは、父が生前、洗濯や料理で長岡京市シルバー人材センターの女性会員さんに大変にお世話になったのが動機です。母が早く逝き、私も会社勤めで忙しく介護保険も未整備だったころで、父娘ともに救われ「いつか地域へ恩返しを」と考えていたのです。

 大手旅行会社で管理職に就いていた私は「55歳で自由な生き方を」と心を決め、2000年1月の誕生日に退職しました。市社協のボランティア講座を受講中のある時、高齢者施設へ買い物の付き添い体験に行った相手の女性から「次回、俳句の集いを開くのであなたも」と誘われたのです。

 当日、女性は病欠され、以後は私が10人ほどの集いの進行や句の発表を任される形になりました。続けるうち「字数や季語の制約もなく、見たまま心のままを詠む自由律俳句の方が集まりやすい」と考え、参加者さんとともに方向を転換。月2回の集いは以後、17年間続きました。自由律俳句は日常の出来事を詠み、日記代わりにもなり有用です。コロナ禍で休止中ですが、他の施設で今も「自由情景俳句」の名で続けています。

 俳句の集いで出会ったのが折り紙でした。入所女性から「こんなの作るのよ」と見せられたのが、回して遊べるこまの折り紙。その人に習い、本も読んでのめり込みました。カエルや紙風船など立体的なものも覚えていき、訪問先の施設で折り方のコーチをするようになったのです。

 折り紙の効用は指を動かすことで脳の活性化につながる点。「使う紙の色をどう組み合わせるか」を思案するのも、自由律俳句の思案と同じ頭の運動になり高齢者に最適です。09には、長岡第六小学校の放課後教室に招かれ、児童約40人に月1回教える講座を8年続けました。伝統文化を継承する人材を育てる気持ちで取り組み、子どもたちからは元気をもらいました。折り紙は人気が高く市内外の自治会から呼ばれる機会が増えています。

 13年から始めた傾聴ボランティアでは、話の途中で1度は必ず笑っていただくように心がけています。これまで施設や個人宅の計5人を訪問。「待っていたよ」と出迎えられる時に、無上の喜びを感じます。健康不安ゼロとはいきませんが、これからも体が続く限りできる範囲でボランティア活動を続けていくつもりです。


ちかおか・すがの
1945年、宇治市生まれ。大手旅行会社を退職後、長岡京市社協の個人ボランティアに登録。自由律俳句と折り紙を習得して高齢者施設や学校などで指導する。2013年から傾聴ボランティアにも従事。21年、福祉分野のボランティア功労で厚生労働大臣表彰を受けた。長岡京市在住。