ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


「普通の暮らし」支え続け

社会福祉法人「京都障害者福祉センター」
事務局次長
 酒伊 良行 さん




「常に地域のニーズに目を凝らし、必要な事業を展開していきたい」と話す酒伊良行事務局次長。(京都市南区の京都障害者福祉センター本部)
 「障がいのある人とその家族が地域のなかで尊厳を保ちながら普通の暮らしができるように支援する」。1984年の発足以来、私たち法人はこの基本理念を大切に、障害者福祉につながる各種事業を展開してきました。

 「普通の暮らし」を一つに定義づけるのは困難ですが、私たちは「施設に入所しない生活」こそ重要と理解しています。法人にはいま、京都市内4エリアに生活介護や就労継続支援、グループホームなど23の事業所(うち14は市からの受託)があり、職員約350人が働いています。すべての職員に、基本理念を確実に継承してもらい、自立や社会参加を通じた利用者さんたちの幸福追求を支援し続けていくつもりです。

 私は、「京都市肢体障害者協会」が法人化され「京都(身体)障害者福祉センター」に衣替えした84年、市から受託運営中だった「京都市身体障害者福祉会館」に新卒職員として入所しました。学生時代にボランティアサークルに所属して障害のある人の生活介助を経験。進路選択で、自然に今の職場へ足が向いたのです。

 デイサービス(生活介護)事業所に配置され、当初は食事介助のほか送迎車を運転して京都市内全域を走り回る毎日でした。2001年に、相談支援専門の地域生活支援センター「らくなん」で主任相談員に赴いたころからは、障害のある人たちの厳しい生活実態にかかわることになりました。

 お金、住まい、働く場がないうえに、他の生活課題も抱え整理がつかない状態での相談は、当時も今も絶えません。薬物やごみ屋敷などの問題にも直面します。相談者のストレスは深刻で、時間がかかっても何らかの福祉サービスにつなげるのが私たちの役割です。解決に至っても相談者が「自力で成し遂げた」と感じられるように進めるのがコツ。相談数はうなぎ上りに増え、今や事業の重要な柱になっています。

 障害者福祉の現場では、地域のニーズに常に目を凝らし、必要な事業を創出することが求められます。働く保護者から要望が強かった「医療的ケアが必要な子ども」を含む放課後等デイサービスはその一つです。14年に伏見エリアで始め、3年後に山科エリアでも導入しました。

 就労継続支援は、B型7事業所のうち、2事業所に就労移行支援事業を加え、企業実習や職業訓練を通じて一般就労へつながる道を確保。毎年、2〜3人が企業就職を果たせるようになりました。

 今後を見通すと、障害のある人自身と家族の高齢化が最大課題になると感じます。新たに介護保険の事業を興すべきかもしれません。家族が倒れても施設入所は避けられるよう、シェアハウスの新設なども検討事項に上ります。法人はいま、若手の職員不足が深刻です。魅力多い職場づくりを進める一方で、私たちの理念に賛同する若者たちの参画を促していきます。


さかい・よしゆき
1962年、神戸市生まれ。龍谷大卒。84年、社会福祉法人・京都(身体)障害者福祉センターが受託する市身体障害福祉会館に就職。2005年から法人本部事務局次長。市自立支援協議会権利擁護部会座長などを歴任。介護福祉士、主任相談支援専門員。