ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

パピーウオーカー

盲導犬育成にも理解を




盲導犬候補の生後2カ月のラブラドールレトリバー(2019年6月、京都市内)=提供写真
 関西盲導犬協会は、「京都で盲導犬の育成を」と願う市民によって設立され、今年で40周年を迎えました。これまでに延べ430人余りの視覚障害者に盲導犬を無償貸与しています。

 盲導犬は、安全に安心して外出したい、という視覚障害者の願いをかなえる大切なパートナー。長年、盲導犬と生活されているあるユーザーは「盲導犬は目が見えないことを忘れさせてくれる存在」と言い、ある方は「盲導犬がいることで、目が見えていた時には考えられなかった豊かな人生が送れている」と、その絆の深さ、存在意義を語ってくださいます。

 さて、このように視覚障害者の心強いパートナーとなる盲導犬は、多くのボランティアのご協力によって育てられています。盲導犬候補の子犬は、盲導犬としての素質をもつ繁殖犬から生まれるのですが、その繁殖犬は、ボランティアのご家庭で飼養されています。

 そして盲導犬候補犬として生まれた子犬は、生後約2カ月から1歳になるまでの約1年間、パピーウオーカーのご家庭で育ちます。パピーウオーカーとは、子犬に人間との信頼関係や社会性を身につけさせるため、ご家族で子犬を育ててくださるボランティアのことです。

 年間、50軒ほどのパピーウオーカーに子犬の飼養を委託していますが、現在、そのうちの20軒余りが京都府内にお住まいです。

 盲導犬候補犬が人間の愛情の中で育まれ、多くの経験を積むことは、将来、盲導犬になる上で大きな力になります。そのため、パピーウオーカーのご家庭では、子犬の世話はもちろんのこと、日々、子犬に話しかけ、いろいろなところに出かけ、さまざまな出会いを子犬に経験させています。

 その中で、公共施設やスーパーなど、盲導犬となったときに利用できる施設なども、子犬のときから経験させておきたいところですが、今の日本では、これらの施設の中に子犬を連れて入ることはできません。日本より遅く盲導犬事業が始まったお隣の韓国や台湾では、子犬も盲導犬と同様、さまざまな施設に連れて入ることができるそうです。そのような点を考えると、日本はまだまだクリアすべき課題がありそうです。

 当協会発足当時に比べれば、多くの方々の努力により盲導犬の使用環境も良くなってきました。しかし、さらに進んで、盲導犬と生活している人も、そうでない人も、どのような立場の人も互いに尊重し共生できる、多様性のある社会の実現が望まれます。(公益財団法人関西盲導犬協会啓発担当 久保ますみ)