ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

義肢装具士

可能性広げるお手伝い




装具の製作にあたって足型の採型をする義肢装具士(提供写真)
 義肢装具は義肢と装具に分かれます。義肢は手足を失った人が装着する器具で義手、義足と呼び、元の手や足の機能や形を復元するために装着されます。装具は手や足、腰や首など体の部位に病気やケガなどにより、まひや損傷が生じたときに装着することで、患部の動きを固定や矯正することで治療やリハビリテーションを行うことや、装着することで日常生活の補助を目的とします。

 義肢装具士は、医師の処方のもとに必要とされる義肢装具を設計、適合する医療専門職のひとつです。多くの義肢装具士は民間の義肢装具製作所に所属して病院へ出向いて、装具を必要とされる方の患部をギプスなどで型を取り、その型をもとに義肢装具を製作します。完成までには装着者が快適に使用できるように調整を行い、適合した義肢装具を提供します。

 義肢装具も技術の進化に伴い進化しています。カーボン製で軽量に剛性を高めたり、義足の膝や足の部分には電子制御により装着者の歩行に合わせて自動的に速度を合わせたり、曲がる角度を制御することも可能です。

 閉幕した東京2020パラリンピックでは多くのパラアスリートが活躍しました。義肢装具士はパラアスリートが最大限の力を発揮できるように義肢装具の微調整をミリ単位で繰り返し行い、会場でのトラブルにも対応するためスタッフとしても派遣されて競技に集中してもらえるように陰ながらサポートしていました。アスリートに限らず自分の可能性を高めたい、新しいことができるようになりたいなど、希望を義肢装具士に伝えてください。義肢装具士ならではのアドバイスができると思います。

 義肢装具は実際に使用する場面を直接確認することで適合の状態や、調整の必要性などを判断する場面が多くあります。しかし、新型コロナウイルスの影響で義肢装具を必要とする患者さんが病院に来院することが難しくなったり、病棟への制限などもあり、適切なタイミングで製作や調整の対応をすることができなくなったケースもあります。

 義肢装具士は1987年に資格制度が誕生した、医療専門職のなかでも比較的新しい国家資格です。資格を取得するには義肢装具士養成校に入学して規定の単位を修め、卒業すると国家試験の受験資格が得られますので、この試験に合格すれば義肢装具士になることができます。有資格者数は全国で約5800人です。

(株式会社洛北義肢クリニカルサービス部係長 義肢装具士 飯塚悠)