ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

《 失語症 》

社会参加へ支援者養成




京都府の失語症者の意思疎通支援者養成研修で実習する受講者(2021年10月、京都市中京区・市地域リハビリテーション推進センター) =提供写真
 失語症は脳梗塞や脳出血など脳の病気が原因で生じます。言語中枢と言われる脳の特定の部分が病気のため損傷した結果、言葉を話す・聞く・読む・書くことが難しくなります。

 例えば、声は聞こえるのに何を言われているか分からなかったり、声は出るのに言いたい言葉が思い浮かばなかったり、誤った言葉を言うことがあります。これはストレスといった心理的な問題で生じるわけではありません。記憶や状況判断といった認知機能が低下し、日常生活において問題が生じる認知症とも異なります。言葉の理解や単語が出てこないという症状はありますが、記憶は保たれ、状況を理解してその場に合った行動ができます。失語症は発症後、言語機能が改善することが多いですが、発症前の状態に回復することは難しい場合が多いです。

 失語症になると、会話が必要な場面で困難が生じます。例えば買い物に行って店員の説明が十分に分からず時には誤って理解し、品定めが難しくなります。また自分の欲しい物が正確に伝わらず、買い物を諦めたり希望の品とは異なる物を買ってしまうこともあります。このような不自由さは、外食や趣味の会への参加にも影響を及ぼし、外出の機会が減ってしまう方もおられます。そのために心理的に落ち込むことも多くなります。

 失語症者は全国で30万〜50万人おられると言われています。現在、京都府内にはいくつかの失語症友の会があり、失語症者が集まって交流を持っておられます。全国的には日本失語症協議会があります。

 厚生労働省は失語症者向け意思疎通支援者養成・派遣事業を都道府県で行うよう勧告しています。京都府でも4年前から言語聴覚士会が委託を受け支援者研修を実施しています。研修では座学と実習で、失語症やその問題点について学んだり、さまざまなスキルを使い失語症者とコミュニケーションを取ることを学んだりします。研修修了後は支援者に登録してもらい、派遣事業を行っています。個人あるいは失語症友の会や会話の機会を提供する失語症サロンへの派遣により、失語症者の社会参加をサポートしています。

 失語症者やその支援者の相談窓口は、京都府言語聴覚士会の他に京都府リハビリテーション支援センターや京都市地域リハビリテーション推進センターに設置されています。失語症者向け意思疎通支援者養成研修について、興味のある方は京都府言語聴覚士会のホームページをご覧ください。

京都府言語聴覚士会