ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

《 白杖 》

視覚障害者のシンボル




歩行訓練士(右)から訓練を受ける鳥居寮の入所者(9月26日、京都市北区紫野・鳥居寮)=提供写真
 京都市北区の千本北大路に「鳥居寮」という施設があります。病気や事故で「見えない、見えにくい」状態になられた人たちが1日約20人、社会復帰や自立を目指し、入所や通いで歩行訓練などを受けています。

 この界隈は、鳥居寮を運営する「京都ライトハウス」や「京都府立盲学校」が近接していて、「白い杖(つえ)」の利用者と頻繁に出会うエリアです。

 「白い杖」は、身体障害者福祉法で「盲人安全杖」と呼称されますが、一般的には白杖(はくじょう)と呼ばれています。昨秋のテレビドラマで取り上げられたことから若い人にも、なじみのある用語になったようです。利用される人は、道路交通法14条に「目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え…(以下、省略)」と記され、車両や歩行者らから安全を確保するために使用することとされています。

 白杖には、大きく分けて、直杖=ちょくじょう=(つなぎめのないまっすぐなつえで基本的なタイプ)や折り畳み式(使用時はまっすぐですが、使用しない時は4、5段に折れてカバンなどに収納でき、外出時の持ち歩きに便利なタイプ)の主に2タイプがあります。

 白杖を体の前方で使うことにより、障害物や段差などの存在に気付いたり、点字ブロックや路面の変化などを知ることができます。もちろん、うまく使うには一定期間の訓練が必要で、鳥居寮のような施設があることを知らなかったという人はまだまだ多いのです。

 病気や事故などによって中途で「見えない、見えにくい」状態になった人の中には、白杖を使うことにためらいを感じる人も少なくありません。安全に外出するためにも白杖を使われることを強くお勧めします。

 医療や教育の関係者と立ち上げている「京都ロービジョンネットワーク」では、「見えない、見えにくい」人と福祉サービスが円滑につながるよう白杖を紹介するチラシや啓発リーフレットを作り、ホームページなどでも周知を図っています。

 皆様にお願いしたいのは、後を絶たない駅のホームからの悲惨な転落や交通事故などを防ぐために、白杖の利用者を見かけたら「何かお探しですか」「お手伝いをしましょうか」などと気軽に声をかけていただきたいことなんです。訓練を重ね、どんなに熟達されている人でも、その声掛けでとても安心すると皆さんおっしゃいます。

 「見えない、見えにくい」人のシンボルである「白い杖」をよろしく!

(鳥居寮副所長 山本由美)