ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


歩道で白杖の使い方を細やかにアドバイスする歩行訓練士(京都市北区)=提供写真

《 歩行訓練士 》

視覚リハのお手伝い



 見えない・見えにくい方々を支援する「視覚障害生活訓練等指導者」という職種があります。主に白杖(はくじょう)を使用した歩行訓練を行うための資格と位置付けられているため、一般的に「歩行訓練士」と呼ばれます。

 歩行訓練の大きな目的は、視覚障害の方が移動の自由を得ることです。慣れない場所ではサポートがないと移動しにくく、行きたい時に行けない制約が生まれてしまいます。

 訓練では、移動の制約を少しでも解消するために、行きたい場所(自宅近くのコンビニやドラッグストアなど)まで、どのように目的地まで歩いて行くのか、「地図を頭に描く」練習をします。

 歩行訓練を始めた頃は、恐怖感で歩けなかった方が、今では買い物や趣味の活動に積極的に参加されるなど、見えない・見えにくくても、単独で歩くことができる自信は、自立への大きな意欲につながります。その方らしい生活を構築していくために大切な、視覚障害リハビリテーション(以下視覚リハ)のプログラムの一つです。訓練生が自信を取り戻していくことを実感できることが喜びです。その中で、新たな価値観や考え方に触れ、訓練士自身を成長させるきっかけにもなっています。

 「歩行訓練士」は、国家資格ではありませんが、一定の専門性が認められ、厚生労働省の認定資格と定められています。養成機関は日本ライトハウス(大阪府)と、国立障害者リハビリテーション学院(埼玉県)の全国で2カ所あり、定められた科目を修了することが必要です。

 訓練士の課題としては、どこでも自由に受けられる体制ができていないことです。その要因は大きく分けて二つあります。

 一つ目は、認定資格のため、社会的な認知度が低いことです。そのため、仕事内容や魅力を知ってもらう機会も少なく、成り手不足が発生しています。

 二つ目は、身体障害者の中で、視覚障害者の占める割合が小さく、視覚リハのサービス提供時に利用者とのマッチングがうまくできない場面が生まれています。

 視覚リハのサービスを恒常的に提供できる団体や機関が限られ、歩行訓練士が一人しかいない地域もあり、居住地域の格差是正が大きな課題です。

 歩行訓練士からのお願いです。歩道や駅ホームに設置の点字ブロックの上に立ったり、自転車を止めたりするとぶつかったり、曲がるべき分岐点を行き過ぎて方向がわからなくなったり、最悪、駅ホームでは転落事故の危険もあります。事故を未然に防ぐためにも「お手伝いしましょうか?」などの声掛けをお願いします。

(鳥居寮 青木一憲)