ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

《 吃音(きつおん) 》

心理的に乗り越えも




奈良言友会と京都言友会の合同例会で討論する参加者(京都市下京区)=提供写真
 みなさん、吃音(きつおん)という言葉をご存じですか?

 一般的に吃音者は100人に1人と言われています。吃音の症状は百人百様と言われています。大部分は幼少期に発症する発達性吃音ですが、青年期から起こる獲得性吃音のタイプもあります。発症原因は遺伝や脳神経系の異変など、さまざまな指摘がされていますが、完全解明には至らず治療法も確立されているわけではありません。

 吃音者は、他人を意識すると緊張で言葉が出にくくなります。ですが、仲間同士で話をすることで、緊張せずに話ができる人もいます。

 多くの吃音者は就職時の面接で、緊張して言葉が出にくくなり、入社試験に失敗する人や、学校では吃音のまねをされてからかわれたりして、仲間の輪に入れずに孤立することもあります。

 吃音者は、緊張すると滑らかに言葉が出なくなったりする症状があります。本人がゆっくりと緊張せずに話す練習をすることも必要ですが、社会的に吃音の認知が広がり理解される必要があります。

 京都言友会は1967年、吃音克服を目ざす人たちで結成しました。当初は吃音の矯正を目的に呼吸や発声の練習を続けてきました。その後、レクリエーションや例会を通じ、会員同士が吃音を気にせず何でも話せる場にすることで吃音を心理的に乗り越える方向へ転換していきました。

 現在は、毎月1回の例会と年3、4回の吃音講座がメインの活動になっています。会員は現在、京都府内に70人います。例会では、会員同士で本を朗読しあったり、電話で話す練習も行っています。

 人前で声が出なくなる恐怖と緊張は、思春期に近いほどつらい体験として心に傷が残ります。多様な人と交流することで、苦しいのは自分だけではないと共感できるはずです。歳をとるとともに発声時の緊張は解け、吃音が軽くなる人が多いのです。

 どのような立場の人もお互いに尊重し合え、共生できる多様性のある社会の実現を願っています。

 吃音で悩んでいる人はぜひ京都言友会kyoutogenyuukai@ybb.ne.jpにご連絡ください。一緒に活動をしていきましょう。

(京都言友会 森育司)