ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

《 点字技能師 》

視覚障害者の情報の要




点字入力・編集ソフトを使って、点字技能師が作業を行う(提供写真)
 1825年にフランスで生まれた点字は、視覚障害者の皆さんがさまざまな情報を得たり、読書を楽しんだりするうえで欠かせない文字です。六つの点の組み合わせで、五十音や数字、アルファベット、楽譜などを表せます。点字図書の製作にあたっては漢字を「かな」に直し、かつ読みやすさに配慮して意味のまとまりごとに区切って書きますので、法学・医療など各分野にふさわしい訳や区切り方をします。正確な情報を伝えるために設けられている点字の幅広いルールに熟知し、視覚障害者の読書・情報入手を支える要となるのが点字技能師です。

 点字技能師は、全国の視覚障害者施設・団体、盲学校、専門学校等で活躍しています。2000年に発足したこの制度は準国家資格に相当し、年に1度検定試験が実施されています。試験は、障害者福祉や視覚障害者教育、国語文法等に関する知識を問う学科試験と、『日本点字表記法』に準拠した点字表記による実技試験に分かれます。最寄りの市町村などで開催される点字講習会を受講することがこの資格を目指す第一歩になると言えるでしょう。課題として、正式な国家資格として認知されて点字技能師の社会的立場や処遇が改善されて人数が増えること、ITが普及した今日も活字から点字に直す点訳作業に多くの時間と労力を要すること、そのことが認知されていないことが挙げられます。

 視覚障害者総合福祉施設・京都ライトハウスでは、通常の文字等をそのままでは読めない・読みにくい人たちの「読みたい、知りたい」に応える情報バリアフリーに取り組んでおり、点字技能師の資格をもつ職員が、①点字講習会②点字図書の製作・企画販売③点字サイン(街中の点字案内板等)のJIS規格に基づいた監修④点字の普及などに携わっています。「こんな製品を待っていた」「図が分かりやすい」などのお声を視覚障害者の皆さんから伺う機会もあり、大変励みになっています。

 最後に、街中や駅などで見かける点字ブロックは、視覚障害者に進行方向や危険箇所を伝える大切な情報源です。点字ブロックの上に自転車を止めたり、立ち止まったりすると、視覚障害者がぶつかったり避けることで方向を失ったりして、ホームから転落するなどの事故にもつながります。ぜひとも「お手伝いしましょうか?」などと声をかけていただけますようお願いします。

(京都ライトハウス情報ステーション 野々村好三)