ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

《 助産師 》

女性の生涯にわたるケア




妊娠期パパ向け講座で妊婦体験や沐浴を指導する助産師=提供写真
 助産師は「お産婆(さんば)さん」と呼ばれていた江戸時代からお産のお手伝いに加えて、女性とその家族の一生に寄り添い健康を支えています。保健師助産師看護師法では「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又(また)は妊婦、じょく婦若(も)しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義されており、女性のみが就ける国家資格です。妊娠・出産に加え、性教育、更年期の相談、不妊症・不育症、遺伝相談、国際支援、災害支援など多様な分野で活動しています。

 助産師になるには、看護師国家試験受験資格取得後、養成教育機関での学修による受験資格の取得が必要です。教育課程には、2年間で学ぶ大学院、1年間の専攻科、大学別科、専修学校、大学4年間での助産コースの選択などがあります。

 助産師のかかえる課題を三つ紹介します。①出産場所は病院と診療所がほぼ同数にもかかわらず助産師の6割は病院勤務です。専門性を発揮できない病棟で看護師として勤務する助産師もいます。②高度医療が必要なハイリスク妊産婦の増加、出産後の育児不安や育児困難感の深刻化など社会の動向への対応が求められ、助産師自らが計画的に助産実践能力を強化・維持し、専門性を高めていく必要があります。③助産師の養成数は少なく、離職率は高いため不足しています。潜在助産師の掘り起こしなど人材確保が必要です。

 京都府内には897人の助産師が病院や診療所、助産所、保健センターや行政、養成機関で働いています(2020年)。助産師は開業権を有しており、56人は助産所を開業しています。希薄化した近隣関係や核家族化がすすむなかで妊産婦の孤立化や育児機能が伝承されないという課題に対して、開業助産師は、地域に根差した継続的な母子の支援を行い、女性とその家族のもつ力を十分に発揮できるように尽力しています。一方、分娩(ぶんべん)を扱っている助産所は12カ所です。自然な妊娠・出産の経過や母乳育児を大切にし、利用者様からも高評価を得ています。助産所での分娩という選択肢がなくならないように、助産師のもつ技と産婆の心や知恵を伝承していくことは、京都府助産師会の課題です。

 本会は、1905年に京都市産婆組合として発足し118年を迎えます。行政、医療福祉、学校や地域団体と連携して、女性の生涯を通じてのニーズにこたえられる切れ目ないケアの提供と専門性に基づいた助産師職の実践能力の向上を目指しています。(公益社団法人京都府助産師会代表理事 眞鍋えみ子)