ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

《 おむつフィッター 》

介護の排泄トラブル対応




おむつフィッターの研修を受ける受講生=提供写真
 排泄(はいせつ)用具の情報館「むつき庵」(京都市上京区)では、2004年からおむつフィッター研修を行っています。受講生は現在9640人で、介護士、看護師、理学療法士、福祉用具専門相談員、そして一般の方など誰でも受講できます。

 おむつフィッターとは暮らし全体から排泄トラブルの原因を探り、適切な対応ができる人のことです。むつき庵の相談によくある「おむつからの尿漏れ」は、おむつの使い方が適切であれば解決するとは言えません。陰部の痒(かゆ)みのために掻(か)いてしまうと、尿漏れが起きやすくなります。痒みの原因は疾患によるものか、陰部清拭(せいしき)の仕方が良くないのかなど、原因も探る必要があります。研修では、排泄のメカニズム、おむつの当て方、福祉用具の知識だけでなく、原因を探るための方法や考え方を伝えています。さまざまな職種の方と出会い話し合うことで、知識が広がり視点が変わり、暮らしや仕事に生かせるという感想が多く寄せられています。

 2級以上の受講生は、ミニむつき庵を開設することができます。むつき庵の趣旨に賛同した方々が、ご自身の仕事場などでおむつや排泄用具を展示して相談にのるというもので、北海道から九州まで21カ所のミニむつき庵があります。研修で出会った方々が地域でネットワークを作り、ともに学んだり活動したりしています。

 元旦の能登大震災の折には、福井のおむつフィッターたちが富山や石川のおむつフィッターと連絡を取り合い、情報を収集して1月4日には必要な物資を届けました。その数日後は輪島に行き、おむつ類や口腔(こうくう)ケア用品などを届けています。活動には継続が必要で、むつき庵は支援金を集めるなど活動を支えています。各地のおむつフィッターが支援活動でもつながる。その大切さを感じています。

 介護が必要になった方の暮らしが回復するには、まだまだ多くの課題があります。何より介護の人材不足が叫ばれています。高齢者施設では海外からの介護士が多くなりました。そこには言葉や文化の壁があります。むつき庵では「日本語と英語で学ぶ排泄ケア」という本を出版しました。心地よい排泄は心身を健やかに保ちます。そのためケアの基本を分かりやすく伝えたいと思ったからです。震災時にすぐに役立つものではありませんが、超高齢社会の一助になればと願います。

(排泄用具の情報館「むつき庵」代表・浜田きよ子)