ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ:「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

《 いのちの電話 》

まずは悲しみの共有




相談者からの電話を受けるボランティア相談員=提供写真
 京都いのちの電話は、「眠らぬダイヤル」として24時間365日相談活動を続けています。

 原点は1953年にイギリスで始まったサマリタンズという電話相談組織です。「いのちの尊厳とはまず悲しみを共有することからはじまる」としたこの運動は各国に広がり、71年に東京で創設され、京都では82年に開局されました。現在では全国50センターに広がっています。

 「悲しみを共有する」はとても重たい言葉です。相談員の募集をする中で「とても私にはできない」「ましてや自死をとめるなんて」という声を多く聞きます。そのたびに私はそのような力が私たち相談員にあるのではないということをお話しします。誰も簡単に自死を止めることなんてできません。それでも、かけてくれた方が思いとどまってくださったとしたら、相談員がただただ誠実に向き合い寄り添った結果なのかもしれません。

 他者のことを「わかる」ことは難しいことです。それでもわかろうとするまなざしをむけることは出来ます。それは「人を大切にする態度」です。我欲ではなく過度な保身でもなく、他者への温かいまなざしが実現できるように願いながら相談員は電話の前に座るのです。(この力を「夜と霧」の著者ヴィクトール・フランクルは自己超越と呼んでいます)

 養成期間は2年間、自分を振り返りながら研修を重ねます。この態度は相談員になってからも続きます。「関わりの中で歩んでいる」などの声があるように、相談員は相談者との出会いが自身を歩ませてくれたことを実感しています。意味を感じることができる活動だからこそ、全くの手弁当なのに仕事をしながらも続けておられる方が多いのだと思います。

 電話は毎日毎時やむことなくかかり続けていますが、相談員の減少により着信率は低迷し、心苦しい現状となっています。必要とする人がいるのであれば、私たちは活動を続けて行きたいと願っています。

 電話の向こうには社会が広がっています。私たちの活動はおたがいさまの市民運動です。ひとりでも多くの方にこの活動の仲間になっていただきたい、と心から願っております。

 相談の電話は075(864)4343へ。

 活動内容、養成講座のしくみなど、詳しくお知りになりたい方は事務局までご連絡ください。京都いのちの電話事務局075(864)1133。(京都いのちの電話事務局長 中瀬真弓)