ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

工賃増へ向けての取り組み助成

ポーチ・木工製品…
販売苦戦も開発意欲

前年度の助成団体 コロナ禍 活路探る(2020/09/28)


 京都新聞社会福祉事業団は、障害のある人が働く作業所など福祉施設の新商品開発や販路拡大などを支援する「工賃増へ向けての取り組み」助成事業で、2019年度に京都府、滋賀県の10団体に総額113万円を支給した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、商品販売やサービス受注が苦戦を強いられる中、施設利用者や職員・指導員らは、助成金で整えた機材を生かし、創意工夫を重ねながら打開策を探っている。

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助成金で購入した工業用ミシンで、新商品のファスナー付きポーチを製作(城陽市・チェリー工房)
 同事業団に寄せられた「善意の小箱」寄付金などをもとに19年度に助成したのは、作業所や就労継続支援事業所など京都府2団体、京都市6団体、滋賀県2団体。パンの商品改良のための機材購入費やレザークラフトの新商品開発のための材料費、清掃業務の受注強化費などに助成した。

 城陽市寺田のチェリー工房(石原章子理事長)は、家庭用ミシン4台で布雑貨の縫製作業などを行ってきたが、新製品開発のための工業用ミシンの購入費として助成を受け、1台を購入した。ところが「コロナ禍」で併設する店舗の客足が減り、新商品のファスナー付きポーチは見込んだほどの売り上げには至っていない。一方、感染予防のためのマスクの注文が増え、製作に追われるほどに。購入したミシンも威力を発揮している。

 また、ポリ袋の環境問題対策で7月からレジ袋の有料化が始まり、買い物用のエコバックやあずま袋の需要が増え、予想外の売れ行きに。指導員の堂浦裕香子さんらは作業場での換気や席の間隔、非接触型体温計の設置など、ウイルス対策に配慮しながらも、利用者の仕事が続けられるのを喜んでいる。

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小型自動カンナは、積み木製作で品質改良に貢献(大津市・ウッディ伊香立)=提供写真
 大津市伊香立のウッディ伊香立(中塚祐起施設長)は、木工の主力製品・積み木の品質改良のための小型自動カンナの購入費として助成を受けた。近くの道の駅「妹子の郷」での販売が、今年前半は道路を利用した行楽客の立ち寄り減などで苦戦した。7月以降は人の動きも出てきて、月1回の直接販売もやや持ち直してきたという。

 同施設では1階で開くそば屋も客数を1日20人に制限するなど感染予防に努める。2階での木工や縫製も「密」を防ぐために、作業を分散したり、自粛したりの対応も。その中で農作業の生産物の移動販売などはこれまで以上に積極的に取り組み、サービス管理者の山本大樹さんは「厳しい状況だけど、元気に作業に取り組んでいます」と話している。

今年度から支給額増

 京都新聞社会福祉事業団は本年度、「工賃増へ向けての取り組み」助成の支給総額を200万円に増額、1団体あたりの助成上限額も20万円から50万円に引き上げる。近年、福祉施設からの経済活動への支援要請が多いため、助成額を拡充する。募集時期も変更し、福祉活動一般を対象とした「福祉活動支援」事業と同時に11月に募集、来年3月に贈呈する予定。工賃増助成は、障害のある人の工賃(賃金)を増加させるための新商品開発や商品改良、販路拡大や開拓などを支援するため、2009年から始め、これまで82団体に計1046万円を贈っている。