ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都府内の配食サービス

スタッフ減員や調理委託
コロナ禍、工夫と努力

変わらぬ需要 絵手紙やメモで心配り
(2020/11/16)


 1人暮らしなどの生活環境や健康状態などで食事作りがままならない高齢者世帯。栄養バランスのとれた食事を届ける「配食サービス」は、20年ほど前から京都府内各地で社会福祉施設やボランティア団体などが実施し、安否確認も行える事業としても評価され、定着している。今年初めからの新型コロナウイルスの感染拡大という厳しい環境の中、各施設や団体は工夫や努力を重ねてサービス継続に力を入れている。

写真
温かいカレーの配食の日も(9日、京都市中京区・市御池老人デイサービスセンター)
 京都市は、施設や事業者に委託して1食500円以下で昼食時に届けている。本年度上半期(4〜9月)は、38施設・事業者が約13万食を配達した。感染拡大の影響を強く受けた期間だったが、前年度同期に比べて施設・事業者は2カ所、配食数は約2600食の減少にとどまった(市社会福祉協議会まとめ)。

 中京区の「市御池老人デイサービスセンター」では今年4、5月ごろ、デイサービス事業への新規相談は止まったものの、配食サービスの需要に変化はなかったという。職員の体調管理には通常以上に配慮し、消毒液が品薄になったが、「在庫が多かったので、やりくりできた」とセンター長の秋山博之さん。オートロックやエレベーターを使うマンション居住者に配る際にはボタン操作ひとつにも気を配り、体調に懸念のある利用者に配達する際には、配達する職員の感染予防装備も徹底した。

 北区の「配食ボランティアむつみ」でも4、5月ごろ、ボランティアへの感染予防も考慮して調理スタッフを少人数にした。普段は事務や経理にあたっている母体のNPO法人の職員も協力して、調理を分担して乗り切るなどの工夫をしたという。

 京都市を除く府内では昨年度、約40団体・事業者が約2800人を対象に計約12万3000食を配達した。民間業者に調理を委託して平日は毎日配達したり、公民館や福祉センターの調理施設を使って、ボランティアが月に1、2回、調理、配達しているケースなど実施形態はさまざま。

 ボランティアが中心になっているところは、新型コロナウイルスの緊急事態宣言下で公共施設が閉鎖された影響で4〜6月ごろは中止し、秋口から再開した団体も多かった。その頃には、調理を地元の民間業者に委託し、配達と安否確認を担うなどの対応をとった団体も。また、高齢の配達ボランティアの代わりに、地元の社協職員が配達したり、万一にも接触感染しないように消毒スプレーを持参するなどの配慮も怠らなかったという。

 コロナ禍で外出を控えるお年寄りが多かった。普段以上に配達時の声掛けや見守りを強化し、「弁当に絵手紙や利用者が自分で作る際の調理のヒントになるメモを挟むなどの工夫をした」(南山城村の「配食サービスさくら」)という。また、「配食弁当や会食の機会は大きな楽しみと、利用者に喜ばれた」(長岡京市の配食・会食サービス「燦燦(さんさん)」)と話す団体もあり、配食サービスを継続する重要さを再認識する機会にもなったようだ。