ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都新聞愛の奨学金

昨年度奨学金報告書


経済的、精神的な支えに
「ありがとう」伝えたい

「不安消え進学果たす」「パソコン購入、授業に集中」…


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「京都新聞愛の奨学金」を受けた学生、生徒から届いた報告書。学業への熱意や寄付者への感謝の気持ちなどが記されている
 「京都新聞愛の奨学金」の2020年度の奨学生からの報告書が、京都新聞社会福祉事業団に届いている。コロナ禍の影響で経済的不安を抱えながらも志望する専門学校に進んだ高校生やパソコンを購入しオンラインで勉学に励む大学生ら。寄付者の応援が「心の支えになった」と感謝の気持ちをつづっている。(奨学生の住所と所属学校は支給時)

 学費の捻出が困難な生徒や学生を支援するため、1965年から支給している。2020年度は昨年7月に、公募の一般、交通遺児両部で291人(前年度157人)、公立高推薦の定時制・通信制高校生の部16人、児童養護施設高校生152人に総額4110万円(同2592万円)を贈呈した。

 「進学できないのではと、不安でいっぱいでした」。ひとり親家庭の京都府の女子高校生は、コロナ禍で家計が苦しくなった。しかし、奨学金を受け「不安がなくなり学業に専念できた」。今春、専門学校に進学し「看護師になる夢をかなえたい」と決意を記した。

 家族の収入が激減した京都市の男子高校生は「無事1年間を乗り切れた」。教材費や研修費に充て、節約のため避けていた模試も受けた。「進路を考える時間と精神的余裕ができた」と感謝する。

 両親を亡くし祖母と2人暮らしの滋賀県の女子高校生は、進学か就職かで悩んだ。奨学金で「気持ちに余裕ができ、受験勉強に集中できた」。志望校に合格し、今月、保育士への道を歩み始めた。

 ひとり親のパート収入がコロナ禍で途絶えた京都市の女子大学生はパソコンとネット環境の整備に充てた。「授業に集中でき、課題リポート提出もこなせた」

 アルバイト先が休業した京都市の女子大学生はスマホでオンライン授業を受けていた。奨学金で念願のパソコンを購入、「学習態勢が整った」と喜びを隠さない。

 このほか、「第1志望は合格できなかったが、しっかり勉強します」(京都府・女子高校生)、「不安と焦りでスタートした受験勉強。奨学金が終始、支えてくれた。医師を目指す」(滋賀県・女子高校生)などの報告も寄せられた。

 寄付者に対しては「すごい力をもらった気がする。奨学金の背景にいろいろな人の協力や応援、思いやりを感じた」(滋賀県・男子短大生)、「これだけの大金。『愛の奨学金ノート』を作って大事に使った」(京都市・男子高校生)、「寄付者のメッセージを生徒手帳に挟み、悩んだときに読み返している」(滋賀県・女子高校生)と、無償の善意に熱い感謝の言葉を送っている。

 愛の奨学金は返済不要の給付型で、大学生と専門学校生に年18万円、高校生同9万円、児童養護施設高校生に奨学激励金3万円を支給。本年度の一般、交通遺児両部への申請は5月12日まで受け付けている。募集要項、申請書は事業団ホームページに掲載している。

「コロナに負けないで」

善意、続々届く


 「コロナ禍で困っている学生さんに」と、本年度も「京都新聞愛の奨学金」に多くの寄付金が届いている。昨年春に1000万円を寄付した京都市左京区の女性から再び2000万円が寄せられたのをはじめ、誕生日にちなんだ本紙の寄付金コーナー「誕生日おめでとう」にも多くの賛同がある。京都新聞社会福祉事業団は本年度も支給総額の増額を予定している。

 左京区の女性は「コロナの影響で困っている学生さんが昨年以上に多いと思います。今年も寄付ができてうれしいです」と話している。

 愛の奨学金への寄付は昨年度、前年度比14件増の38件に上り、これとは別に年齢に100円をかけて寄付をする「誕生日おめでとう」にも同16人増の817人が賛同した。

 誕生日寄付申込書には「コロナに負けず、夢に向かって頑張って」「大変な1年、あきらめず乗り越えて」などと、コロナ禍の影響を受ける若者への励ましのメッセージが多く書き込まれている。