ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

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名刺やはがきを印刷した後に最新鋭のカッターを用いて裁断する利用者(9月30日、東近江市林田町、八身ワークショップ)

工賃増へ向けての取り組み助成

コロナで受注激減も
商品開発へ機器拡充

京滋11団体「善意」253万円生かす(21/10/12)



 京都新聞社会福祉事業団は、障害のある人が働く作業所など福祉施設の新商品開発や販路拡大などを支援する「工賃増へ向けての取り組み」助成事業で、2020年度に京都府、滋賀県の11団体に総額243万円を支給した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、商品販売やサービス受注が苦戦を強いられる中、助成金で新たな設備を整備したり、独自商品を開発するなど、施設利用者や職員、指導員らは、懸命な取り組みを続けている。

 同事業団の「善意の小箱」への寄付金などをもとに20年度に助成したのは、作業所や就労継続支援事業所など京都府4団体、京都市4団体、滋賀県3団体。感染予防を意識したオリジナルマスク生産のためのオーバーロックミシン購入費や焼き菓子やパン製造のためのガス式デッキオーブン購入費などに助成した。

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ダイレクトメールなどの封入に威力を発揮する卓上封緘機の操作パネルをチェックする従業員(9月29日、京都市左京区、ワークセンターHalle!)
 京都市左京区の社会福祉法人修光学園の「ワークセンターHalle!(ハレ)」は、コロナ禍で従来受注していた和菓子箱の組み立て作業などが激減。洋菓子の製造販売などを含めても、全体で売上額が一時は20%近くに。そこで、20年度初めからダイレクトメールなどを封入する作業の受注も始め、従業員(利用者)が手作業で封緘(ふうかん)をしていたため、助成金で卓上封緘機を購入した。21年度は、菓子箱の受注や菓子販売も持ち直しつつあり、全体の売り上げも従来の3分の2程度に回復しつつあるが、藤田公智センター長(48)は、封緘機を生かして、作業受注を増やしていきたいとしている。

 東近江市林田町の社会福祉法人八身福祉会が運営する八身ワークショップ(小島滋之施設長)は、取り組んできた印刷作業の効率化に向け古くなった名刺・はがきカッター機の更新費用に充てた。法人全体では百人余りの利用者が、印刷業務や野菜栽培に取り組んでいるが、やはりコロナ禍で仕事量は2割程度落ち込んだ。印刷の仕事は20年来続けており、これまでも「リーマンショック」など経済変動の波を受けることはあったが、コロナ禍は1年半も続いており、請け負う仕事量への影響は大きい。小島さんは「仕事が減ると、利用者が受け取る工賃に直接に響く」と懸念する。また月1、2回は週末などに行っていた、料理教室や旅行などのレクリエーション活動を中止せざるをえず「利用者の皆さんが家にこもりがちになってしまうのも心配」と話している。

 「工賃増へ向けての取り組み」助成は09年から始め、これまで93団体に計1299万円を贈っている。20年度は支給総額を約2倍に増額、1団体当たりの助成上限額も20万円から50万円に引き上げた。21年度は11月に募集、来年3月に贈呈する予定。原資は「善意の小箱」寄付金や歳末ふれあい募金などを充てている。