ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

工賃増取り組み助成

設備の整備や購入
商品の開発に懸命(22/10/31)

コロナ感染拡大で増す厳しさ



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新しいコーヒーマシンの前でカップを準備する利用者ら(14日、京都市東山区)
京都新聞社会福祉事業団は、障害者らが働く作業所や就労継続支援事業所の新商品開発・販路拡大などを支援する「工賃増へ向けての取り組み助成」事業として2021年度、11団体(京都府4、京都市6、滋賀県1)に総額246万1000円を支給した。各作業所などでは20年度以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け商品販売やサービス受注が厳しさを増している。助成金はラベルプリンターや大型清掃機材など新たな設備の整備・購入、独自商品の改良費などに充てられ、利用者らが懸命に作業に取り組んでいる。

 京都市東山区の社会福祉法人なづな学園は運営する「地域交流センター・カフェなづな」にコンパクト全自動コーヒーマシンを購入した。カプチーノやエスプレッソ、カフェラテなど各種の本格的コーヒーやフォームミルクがボタン操作で簡単に作れ、作業の効率化と作業する利用者の安全面の向上にも役立っている。

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陶器類を古新聞で包み、詰めた段ボール箱をデジタル表示の大型計量器に載せる(13日、宇治市)
約20席ある同カフェは観光地の多い東大路に近い立地。テラス席もあり、自家製のクッキーや洋菓子と合わせた飲食で地元住民にも親しまれ、観光客の利用も多かった。ただ、担当する支援員の堤小百合さん(44)によると「20年からのコロナ禍で、売り上げが1、2割減少していた」という。導入したマシンは小型で持ち運びでき、「これからは施設外でのイベントでも利用して販売機会を増やし、工賃増につなげたい。いろいろな飲み物が作れて利用者さんのやりがいアップにもなります」と笑顔を見せた。

 社会福祉法人宇治東福祉会が運営するワークセンター宇治作業所(宇治市)は助成金で、22年度から始めた陶器類の海外リユース事業に利用するデジタル表示大型計量器を購入した。各家庭や事業所で使われずにいる陶器類を回収し、東南アジアなどに輸出して再利用を図る事業で、「燃えないゴミとして回収・処分するのはもったいない」と知恵を絞った同市の求めに市内の7施設が応じた。

 作業は、利用者らが回収したさまざまな形や大きさの陶器類を古新聞などで丁寧に包んで段ボール箱に10`ずつ詰め、計量する。すでに4度回収し、約2200`を計約10万円で売却した。

 施設長の荒邦泉さん(54)は「リユース事業はエコな活動でもあり、市民からは『引き取ってもらってありがとう』と感謝されますが、こちらこそ賃金増になり、ありがたい。大型計量器は重宝しています」と手ごたえを話す。

 同作業所では約40人の利用者が、パン・クッキーの製造販売や公共施設の清掃作業などに取り組んでいるが、やはりコロナ禍で仕事量は1割程度落ち込んだ。今回の助成金では、清掃事業拡大とサービス品質向上のために大型洗濯機なども購入した。

 同助成は09年から始め、1団体の助成上限額は50万円。22年度は12月に募集する予定。歳末ふれあい募金などを充てる。