ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

シンポジウム「障害のある人の就労支援」

働くことや職場提供「一歩踏み出そう」

雇用前の企業実習
双方が理解深める(23/03/14)



 障害のある人の就労支援を考えるシンポジウム(京都新聞社会福祉事業団主催)が2月19日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。障害者雇用をすすめる地元企業の幹部らがパネル討議し、雇用の取り組みも紹介され、障害のある人や家族、支援者ら約100人が聞き入った。障害者雇用を進める企業サイドやサポートするネットワーク関係者からも貴重な報告や提言が出された。

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「障害のある人の職場体験実習を考える」をテーマに語り合ったパネルディスカッション(京都市中京区)
 はじめに、「農福連携でつながるネットワーク〜障害特性を知ることで広がる職場実習」と題し、農園を経営する石﨑信也さん、同農園で働く山部知歩さん、就労支援センター「アステップむろまち」所長の大石裕一郎さんの3人が基調講演した。石﨑さんは、最初の障害者雇用では、知的障害のある30代男性を、「仕事の段取りが悪く頭ごなしに注意して関係がこじれた」失敗を紹介。一方で、精神・発達障害のある山部さんの場合などは、特徴を理解して個性を生かしてもらう働き方を考え、欠かせぬ働き手になっている様子を両者がそれぞれの立場から発表した。

 こうした事例を踏まえて大石さんは、「障害のある人が働きやすい職場はだれにとっても働きやすい職場。障害のある人を受け入れていくことで、企業も良い方向へ変わっていける」と指摘。障害者を雇用する中小企業の側も、働きたいと願う側も双方にメリットがあり「一歩踏み出してください」と提言した。

 後半のパネルディスカッションは、「障害のある人の職場体験実習を考える」をテーマに開かれた。京都府立向日が丘支援学校進路指導部長の木田聡さん、就労継続支援事業所あむりた施設長の白濱智美さん、生命保険会社ライフプランナーの芳賀久和さん、生花店経営者の久田和泰さん、同じく経営者の石井雄一郎さんの5人が登壇。登壇者が順に、雇用を前にした企業での実習や支援機関との連携は、就労を進める環境整備や就労の実現、雇用の継続などに有効である点について議論を深めた。

 木田さんは、就労者と仕事や職場がうまく適合する「マッチング」が大切で、数週間の実習を経て見えてくる課題をどうクリアしていくかが「マッチング」について問われると語った。知的障害児などの場合、抽象概念を理解することが難しく「実習の体験を通じて職場のイメージを具体的に作っていける」と利点をあげ、「働くことで、伸びることがある」と話した。

 芳賀さんは自閉症スペクトラムなどの障害がある双子の高校生の父親としての立場から、子どもの将来に対して漠然とした不安があり、「実習や職場でも、できることなら療育的要素もほしい。実習を通じて、家庭や学校でも見いだせていない子どもの可能性を引き出してほしい」と希望を述べた。

 久田さんは、障害者を雇用して「教えることや伝えることの難しさを認識したり、仕事の裁量の仕方にも気づくことがある。受け入れ側にも役立つヒントがある」と語り、関係者や機関で構成するネットワークの有効性を強調した。