ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

工賃増取り組み助成

焼き菓子製造拡大や
カレンダー作成費抑制

京滋13団体に総額248万円(23/11/14)



 「京都新聞社会福祉事業団は、障害者らの工賃アップを目指す事業所を支援するため、「工賃増に向けての取り組み助成」事業に取り組んでいる。2022年度は、13団体(京都市4、京都府7、滋賀県2)に総額248万円を支給した。障害のある人が働く作業所や就労継続支援事業所の商品開発・販路拡大などを支援し、機器や家具の購入などに活用されている。

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新商品のクッキーを作るあおい苑の利用者らと矢田さん(右)=6日、京都市左京区
 京都市左京区の社会福祉法人葵友愛会は、運営する就労継続支援B型事業所「あおい苑」に自主製品の焼き菓子製造のためのオーブンとミルサーを購入した。新商品の京野菜を使ったクッキー作りのためで、野菜を保存する冷凍庫も近く購入予定だ。

 あおい苑では、自主製品の焼き菓子を拠点施設で作っているが、手狭だったため、以前はグループホームとして使っていた一軒家に新しい機器を導入。グループホームが別の場所に移転して以降活用できていなかったこの場所を、菓子工房とすることにした。

 新商品は、京野菜の黄真珠(黄色いトウガラシ)を使った辛味クッキー2種と、キクイモを使った優しい味のクッキー。野菜を新鮮な状態で冷凍し、製造時にミルサーで粉末にして生地を作ってオーブンで焼く。「これらの工程に新しい機器が大変役に立つ」と、担当職員の矢田尚毅さん(33)。また、施設長の松ア洋子さん(56)は「新商品を量産できるだけでなく、眠っていた拠点を生かすことができてうれしい」と話し、販路拡大に力を入れていく予定だ。

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断裁機を使ってカレンダーを作る利用者(右)と秋山さん=7日、大津市
 大津市の社会福祉法人いしづみ会が運営する就労継続支援B型事業所「いしづみ」は、オリジナルの卓上カレンダーの作成などに使う卓上断裁機を購入した。

 活用しているのは、デザイナー経験のある生活支援員らが利用者を支え、冊子の作成などを受注しているデザイン・制作部門。利用者の工賃を確保するために、昨年から名入れができるオリジナル卓上カレンダーの受注を始めたが、印刷費が高く、手頃な価格に設定できないのが悩みだった。

 これまでは、カレンダー1面を作るのに1枚ずつ印刷していたが、断裁機購入後は、1枚の用紙にカレンダー4面分を面付して印刷し、裁断する。「コストを抑え、工賃はそのまま販売価格を下げられるので、受注増が見込める。自主製品をみんなで作る作業は、利用者さんのやりがいにもつながっています」と、生活支援員秋山牧子さん(51)。

 来年1月始まりや4月始まりのカレンダーの注文を受け付けており、断裁機は記念誌などの受注制作にも役立てている。

 同助成は09年から始まり、歳末ふれあい募金などを充てている。

 1団体の上限額は50万円。23年度は、11月末頃に募集する予定。

(フリーライター・小坂綾子)