ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

にじの家サロンこども食堂&寺子屋

幅広く体験 暮らす力を養う
食事楽しみ学習「たまり場」(2020/06/22)


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勉強時間を終えて、お昼のカレーライスに舌鼓を打つ「にじの家サロンこども食堂&寺子屋」の子どもたち(2016年8月、栗東市小平井3丁目)=提供写真

 新興住宅地が広がる栗東市小平井地区の一角に、柱や壁板がべんがら塗りの2階建て古民家が立つ。玄関には「にじの家サロン」と大書された木製看板がかかる。「田舎のおじいちゃんの家に遊びに来た感じ」。ここを会場にした子ども食堂に集まる児童からは、そんな声も聞かれるという。

 建物は、近くに本部を置く生協法人「滋賀健康医療生活協同組合」が所有者から借り上げ、子ども食堂と共に独居高齢者向けサロンの会場にも使用している。同生協が進める「地域まるごと健康づくり」の一環で、子どもや高齢者が安心して健康に過ごせる「たまり場」を提供して、地域づくりに貢献する狙い。

 「地域の生活困窮者や、困難な課題を抱える家庭に、健康医療生協として常に寄り添っていきたいのです。こども食堂は困窮家庭に限らず小学生を受け入れ、楽しく学びながら、生き生きと暮らす力が養われるよう配慮しています」。担当者で同生協本部相談員の山崎勇一(40)さんは、そう話す。

 「こども食堂&寺子屋」は、夏休みと冬休み期間は週1回、通常月は原則的に第3土曜日に開催される。午前中の2時間を自習や宿題に、昼食後の2時間を自由時間に充てる。勉強を助ける学習ボランティアは、地元の組合員やシニア世代の男性ら。滋賀大や龍谷大のほか、近くにある看護学校の学生たちが手伝いに訪れる日もある。

 自由時間には工作やおやつづくり教室などを開くほか、体験学習も積極的に取り入れている。食育の観点から、組合員の田んぼを借りて子どもたちが田植えをしたり、畑でサツマイモの植え付けや収穫も行う。命の尊さを学ぼうと、同生協本部直営の「こびらい生協診療所」で、自動体外式除細動器(AED)を取り扱う練習や、エコー検査装置で動く心臓画像を見る医療体験に取り組んだこともあった。

 食事の提供は、メニューをカレーライスとサラダに限定。食の大切さを理解してもらうため、あえて1食100円で提供しているが、「いつも具が多くておいしい」と、子どもたちの人気は高い。

 開設以来、調理ボランティアを務める大月英子さん(68)は、食事の礼儀やあと片付けも教えてきた。「あいさつできなかった子が、ここで成長してできるようになるのは、うれしいですね。子どもと接し、自分も少しは社会の役に立っていると思うと、やりがいを感じます」

 食材は、地元の朝市で出る規格外商品の提供を受けたり、組合員や地元農家から寄付される野菜も使う。栗東市社協などからお米の提供もあるが、やりくりしても採算ラインは厳しい状況。事務局では、県などによる子ども食堂向けの公的援助や支援拡充を求める取り組みが、運営継続のうえで課題の一つになるという。

 地域に定着した「こども食堂&寺子屋」も、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月以降は休止を余儀なくされた。古民家の広い和室に再び児童たちの声が響くのは、7月以降と見込まれている。

にじの家サロンこども食堂&寺子屋
湖国に診療所や介護事業所などを展開する「しが健康医療生協」が2016年に開設。古民家を借り、栗東市立大宝西小学校区の小学生を対象に運営する。これまで?回の開催で、参加児童は計1140人。食事提供だけでなく、学習の時間を設け地元のボランティアや大学生が宿題などを手伝う。栗東市小平井3丁目。