京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪 NPO法人京都子育てネットワーク支え合う気持ちを送り継ぐ
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京都子育てネットワークの利用者講師による講座で、楽しみながら学ぶ親子連れ(7日、京都市西京区役所)=提供写真 |
初めての出産後、抱っこの仕方から離乳食まで育児の方法に一人で悩み、孤立感を募らせる母親は少なくない。子どもがいる世帯の8割以上を核家族が占め、公的な子育て支援制度が充実してきた現在でも、悩める母親たちからのSOS発信は続いている。
「京都子育てネットワーク」(略称・京ネット)は1994年、京都市伏見区で結成された子育てサークルが最初。不安や孤立感を抱える母親たちから「何でも相談できる場」と反響を呼んだことから、3年後に広く他の子育てサークルへ呼びかけ、別個のネットワーク組織としてスタートした。
合言葉は「循環型の子育て相互支援」。単に仲間同士で助け合うだけでなく、自分の育児経験やスキルを生かしながら、困っている親や家族を支えようとする自然な気持ちを送り継いでいくのが目標という。
「京ネットに参加して周りから話を聞くだけで、ママたちは『悩みは自分だけではなかった』と、安どされます。そして仲間から何かで助けられたら、次は自分が助ける番だと行動する勇気を持つ。私たちが目ざすのは、そんな人々の増殖計画なのです」。代表の藤本明美さんの活動理念は明快だ。
設立当初は加盟サークルを広げることに力点を置き、一時は145団体を数えたが、後に方針を転換。子育て支援の専門性を深めるとともに、活動停滞や開設準備中の団体に適切な助言や提案ができる事業体へ衣替えを図ってきた。
16年前から始めた「ママ講師バンク」は、そうした狙いを具体化する取り組み。英語体験講座やベビーマッサージ、アロマなどの技術や資格を持った会員約20人が登録する。
ママ講師たちは求めに応じて地域の子育てサークルや決められた会場に出張。「入り口は趣味でも出口は仲間づくり」を基本に、楽しんで学べて心身の健やかな成長につながるよう指導している。
バンクに登録して、バレエとヨガ、フィットネスをミックスした「バレトン」の講師を務める小川雅子さんは、人の役に立てる意義を強調する。「講座などで多くのママの悩みに接すると、支援したい思いが募ります。そこへ受講したママから『来て良かった』の声を聞くと、人の役に立てた充足感と、それが自分の生きる力にもなるのを実感します」
京ネットの活動には大きな柱として、母親と共に同年齢の子どもが集まる「子育てスクール」と、未就学児向けの「つどいの広場」があり、ママ講師たちは両方の会場で活躍している。「つどいの広場」は京都市の委託分(3会場)を含め計4会場で開催。公的な委託事業は「親子の居場所づくり相談室」など、ほかにも複数受注している。
近年は、親子の居場所づくりに関わる相談を、行政や企業に紹介するなど、つなぎ役的な仕事も増えてきた。藤本代表は「税金を使う子育て支援の範囲は限られます。今後は、私たちが得意とする『地域に住んでいるからこそできる助け合い』をバトンタッチしていきたい。助けに動く親が育つと、地域も子どもも同じように育っていくはずです」と話す。