ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

社会福祉法人 いづみ福祉会

社会的認知がやる気生む
染織製品やパン作り 特色に(2021/08/30)


写真
草木染の残り糸を有効利用してネックストラップを織る利用者(5日、木津川市加茂町観音寺石部)

障害のある人たちが働く場「ワーキングセンター」をはじめ、自立的に共同生活を送るグループホーム、児童デイサービス、就労継続支援事業など、「いづみ福祉会」は京都府南部の相楽地域東部エリアで「障害者福祉サービスを広く提供する」拠点となっている。

障害児者の家族を中心に養護学校(現支援学校)卒業後の進路として共同作業所設立を望む声が広がり、共同作業所を職員2人、利用者7人からスタートして30年余り。今では職員約120人、利用者約500人を数えるまでに「成長」した。

なかでもワーキングセンターで作る水準の高い草木染や手織りのショール、のれん、かばんなど麻や綿の染織製品で知られている。

田園地帯の自然に囲まれた施設の周辺を散歩しながら草木染の材料を集め、ヨモギやヒガンバナ、ススキ、茶、タマネギの皮などを煮出して糸や布を染める。グループホームで暮らしながら染めや織りに生きがいを見いだしている利用者の一人は「最初はあまり興味がなかったけれど、今では藍染めやろうけつ染めののれんやバンダナのデザインを考えるのも楽しい」と話す。荒川智行施設長(48)も「利用者、職員のやる気に支えられて継続してきた」と応じる。

今は隣の奈良市の施設「奈良町物語館」で年4、5回染め織り展を開く。昨年からは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた「緊急事態宣言」などで中止を余儀なくされることもあるが、それ以前は染織部門で年間300万円以上ある売り上げに貢献してきた。作り、売る側も「外国からの観光客にも売れた」と盛り上がったりして、自らの働きが社会的にも認知される喜びを感じているという。昨夏も地元の有名寺院の浄瑠璃寺で、草木染の同寺オリジナル巾着を売るなど、新商品開発の視点も持って働いている。

同センターのもう一つの柱がパン製造。食パンや菓子パンを焼いて、センター内の喫茶店で売るだけでなく、車に積んで公共施設や事業所などを巡回して移動販売も行っている。さらに「日持ちのする商品」を作ろうと、茶どころ南山城地域らしい独自の商品「いづみの茶処(ちゃどころ)ラスク」を開発した。こちらは、地元の牧場でつくる特別牛乳を使い、「加茂のせん茶」「南山城のまっ茶」「和束町のほうじ茶」と三つの味を用意して商品登録。移動販売や近くの道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」などでも販売する。2013年には、障害者施設のお菓子のコンテスト「スウィーツ甲子園」京都大会でグランプリを獲得したほど。17年には府内の同様のパンのコンテストでも優勝。「いい材料を使い、いいものを作り売る」という同会のポリシーを実践しつつ全体の売上高向上にも貢献している。

こうした方向性を同会の土井知恵総務部長(45)は「障害のある人が福祉施設でつくりました、買ってください。ではなく、商品として社会で通用するものを作る。手を抜かずに丁寧にオリジナリティーあるものを作り、ちゃんとした場所でちゃんとディスプレーして、ちゃんとした値段で売るというコンセプトを貫くことが、利用者のやる気や生きがい、社会参加にもつながる」と話している。


社会福祉法人いづみ福祉会
1988年、京都府加茂町(現木津川市)で心身障害者通所施設「いづみ共同作業所」開所。92年に精神障害者共同作業所を併設。93年から重症心身障害者通所援護事業「いづみの里」併設。2001年に社会福祉法人となり、02年に知的障害者通所授産施設、精神障害者地域生活支援センターを開設。グループホームも開設。05年、児童デイサービス事業開始。木津川市加茂町観音寺石部。0774(66)4114