ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

ふれあいネット京都

多彩な活動で緩やか交流
音楽・社交ダンス・脳トレ・絵画…(2022/05/10)


写真
楽しみながらギターの練習に励むふれあいネット京都のメンバーたち(京都市北区小山)

豊かな長寿社会を目指す「ふれあいネット京都」の拠点である京都市北区のビルの一室に、ギターの音が響く。演奏しているのは、高齢の4人。同団体の一員である「ともクラシックギターサロン」の活動だ。この日は、初級者クラスのレッスン。参加者たちは、主宰する仲瀬素市さん(78)に教わりながら笑顔で弦を弾き、時間が緩やかに流れていく。「カルチャーセンターのように、高いお金を出して能力や技術を高めるのが狙いではない。仲間づくりの場です」と仲瀬さん。

ふれあいネット京都は、2018年1月に8人の発起人により設立された。シニア人生を有意義に送る方法を、趣味やボランティア活動を通じて見いだしていくことを目的に掲げている。01年に発足した前身の団体で活動していた人たちが理念を引き継いだ。前身の団体発足時は三つほどのサークルからのスタートだったが、現在参加しているサークルや教室は約40にまで広がっている。

参加グループは、歌声サロンやウクレレ、オカリナなどの音楽サークルをはじめ、社交ダンスやウオーキング、脳トレ、外国語、絵画やパソコンなど多彩だ。また、専門家よるセルフケアやくらしの困りごと相談などもあり、それぞれが定期的に活動している。「対等で、困ったときに支え合える人間関係が生まれています。楽しみながらですが、ふれあいネットのメンバーには熟練の経験者やプロ級の人もたくさんいます」。立ち上げメンバーでもある仲瀬さんは、そう語る。

「年をとってやることがなくなると、フレイル(虚弱)や認知症、うつ状態になるリスクがある。サロンの活動はそれらを防ぐ効果があるし、ギターも、楽譜を見て左右別々の動作をするため、認知症予防に最適」と仲瀬さん。ふれあいネット京都については「社会的な活動やサークルなどの受け皿をたくさん作って、興味のあるところに行けるようにしたい」という。

3年前からギターサロンに通い始めた森本邦子さん(84)は、80歳の記念にギターを購入。「ギターは初心者だけど、歌声サロンの主宰もしています。もっと早くから参加していれば、いろんなことができたかも」といい、自分のペースで演奏に取り組んでいる。

北区の拠点は、ふれあいネット京都のメンバーでウクレレを教える谷山雄一さん(74)がこの春、所有する部屋を提供。「以前から活用してほしいと思っていて、公共施設の値上げを機に使ってもらうことにした」といい、参加グループは1人100円で利用できる。「みなさん、『今日も楽しかった』と帰られる。それがいい」と話す。

ふれあいネット京都のオリジナル曲も誕生し、4月の発表会で披露された。コロナ禍で活動が止まっていた各参加グループも少しずつ動きだし、シニアの仲間づくりの場が活気づいている。

(フリーライター・小坂綾子)


ふれあいネット京都
2001年に発足したNPO法人シーズネット京都が前身。18年に現在の団体が設立され、約40のサークルやサロン、教室などが参画して、それぞれが京都市内を中心に定期的に活動している。現在は、10人の委員による運営協議会で運営しており、総会や発表会などで交流する。運営協議会の谷山さん080(4022)2122