ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

男性介護者を支援する会「TOMO」

安心感と仲間意識 大切に
悩み話し合い 孤立防止(2022/05/23)


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例会で、互いの近況や勉強会の予定などを語り合うTOMOのメンバーたち(11日、京都市中京区西ノ京東中合町・喫茶「ほっとはあと」)

京都市中京区の西大路御池交差点近くにある喫茶店で5月初旬の水曜日、中高年の男女10人がにぎやかに会話を弾ませていた。月1回開く「TOMO」の例会。テーブル上には、赤い貯金箱が一つ置かれている。「認知症の新治療法があるらしいよ」メンバーの1人が新聞記事のコピーを配って解説を始めると、4〜5人が身を乗り出して耳を傾けた。

妻や親などの家族を介護する中高年男性にとって、介護の悩みやつらさを吐き出せる場は、限られている。仕事と家事、介護を1人で背負い込み、支援がないまま孤立するケースも少なくない。

TOMOは、京都市内を中心に男性介護者とその支援者らが集まり、悩みや介護体験、解決法などを語り合い、互いにつながり合おうと、2010年に結成された。当初、会員制を採ったが、だれでもいつでも自由に参加できるよう、6年前から会費を含め会員制を廃止。事務費(1人100円)だけを例会会場に置いた貯金箱で集めている。

「例会では趣味や旅行、食事など楽しいお話が中心です。なぜなら、介護のつらさや悩みだけを語る会は続きにくいから。続けていくために必要なのは、何でも話せる安心感と仲間意識。情報を得られるだけでなく話すことでリフレッシュできることが何より重要で、そこが男性介護者支援の核でもあるのです」。会に4人いる世話人の一人で、エルダーライフ協会代表理事の柴本美佐代さん(64)は、そう話す。

結成から10年以上が過ぎ、例会メンバーはひと頃の半数に近い15〜20人に固定してきた。介護する親や妻が亡くなりOBメンバーとなった人たちも多い。それでも活動意欲は衰えず、年2回の料理教室をはじめ認知症などを学ぶ勉強会、高齢者施設見学会、川柳の会など年間行事は絶やしていない。

12年から5年続けた年次主催行事「happy介護ファッションショー」は、メンバーと被介護者が舞台に立ちモデルを務めるイベントで、生きがい創出の観点でも内外から高い評価を受けた。

介護者グループとして、いま力を入れているのが「ケアラー支援条例」。被介護者に偏りがちな公的支援を、介護者を含めた家族全体に拡大すべき、という趣旨で他のケアラー団体と共同して京都府内での制定実現を目ざしている。

コロナ禍でこの2年半、活動を制限されながらも、メンバーたちは将来展望について話し合いを重ねてきた。世話人代表の奥村弘さん(75)は、個々のスキルや体験を生かす方法を提案する。「法律の専門家、お菓子づくりの技能者もいる。私なら覚えた手話を生かしたい。みんなが講師や発表者になり、教えたり学んだりすれば参加しやすい会になる。それが長続きする支援にもつながるはずです」

次世代の男性介護者支援のあり方も検討が続けられ、これまで会で培ったノウハウを引き継ぐ体制づくりを急ぐことにしている。


男性介護者を支援する会「TOMO」
京都市内の男性おばんざい教室で知り合った有志で2010年に発足。介護する者同士で助け合おうと、例会と勉強会、料理教室、交流会、施設見学などの事業を展開している。参加自由。事務局は京都市下京区=075(371)1138