ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

合唱団「ホワイトハンドコーラスNIPPON」

声や手歌、体全体で感動表現
京都やウィーンで練習成果披露(2024/04/22)


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京都チームのステージに共感した客席から白い手袋が揺れた(4日、京都市中京区)

ホワイトハンドコーラスNIPPONは、障害のある子もない子も参加する合唱団で、東京、京都、沖縄の各拠点を中心に活動している。手話言語をベースに歌詞を手歌で表現する「サイン隊」と合唱の「声隊」で構成する。

2020年8月に設立された京都チームは、東京・沖縄と合同で今年2月、オーストリアの首都ウィーンで「第九(歓喜の歌)」などを国連や国会議事堂で公演した。音楽の聖地で世界に向けてパフォーマンスを披露した。

帰国後の4月4日、社会奉仕団体「国際ソロプチミスト京都―みやこわかば」が京都市中京区のホテルで催したチャリティー行事に、京都チームは招かれた。

親子の深い愛情などを美しいメロディーで表現した沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」、東日本大震災から復興への祈りを込めた「花は咲く」などを、メンバーは豊かな表情や手と指、足など体全体を使ったパフォーマンスで表現した。プログラムが進むにつれ約600の客席から、共感の意味を込めて両手を上げてかざす白い手袋が増えていった。弾むテンポの曲が続いた終盤、手袋は満開の花のように舞った。ステージと会場の心が一つになったことを取材で実感した。

京都チームには新メンバーも加わり、小学2年から高校2年まで16人となった。6日に東山区の京都女子大で練習を行った。

サイン隊の練習室では互いの自己紹介をかねて、それぞれの名前を手と指で表すサインネームについて話し合った。読書や音楽演奏、…好きなことや名前の意味にちなんだ言葉などを一人一人が順番に挙げていった。

声楽家、ボイストレーナーで手話通訳士でもある馬場昌子さんがサイン隊の講師を担っている。馬場さんは「こんな感じでどうかな?」「演奏する楽器の大きさを体で表すならどんな感じ?」「お月さんを表現するには満月の形?それとも細い三日月がいいかなあ」と問いかける。本をめくるしぐさやテナーサックスを奏でる姿、花が開いた様子などの案を両手や指で示し、丁寧なやりとりに時間をかけた。

指導する立場の大人が子どもに一方通行で約束やルールを決めていない。歌詞の解釈や表現などアイデアを出し合い、みんなが納得するまでのプロセスを大切にしていることが伝わった。

京都チーム代表の中坂文香さんは「パフォーマンスが多くの人に共感してもらえるのは、自分たちの表現として自信と喜びが込められているからです」と話す。大舞台の出番前に緊張する中坂さんや馬場さんらがびっくりするくらい、子どもたちは自然体で楽しいことが始まるのを待つそうだ。

ホワイトハンドコーラスはベネズエラで生まれたインクルーシブ教育「エル・システマ」の理念に基づく。さまざまな経済環境にある家庭の子が加わることができるように無料で団員を受け入れている。さなざまな立場の人たちが互いの違いと役割を認め、すべての人が音楽を通じた感動を共有する。合唱団がめざす社会の姿が、練習の一端にも象徴されているようだった。


ホワイトハンドコーラスNIPP0N京都チーム
2021年2月に京都市はぐくみ憲章推奨団体として「はぐくみアクション賞」、24年1月に「京都新聞福祉奨励賞」を受賞している。23年には京都女子大と包括連携協定を締結し、24年3月に同大学の卒業式などで歌われる仏教賛歌「聖夜」を演奏した。