ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

ひとりぼっちをつくらないために

2021.02.22

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

弁護士 尾藤 廣喜

2月13日(土)の午後、オンラインである集いが開かれた。この集いは、障害のある仲間たちのための事業所の全国組織である「きょうされん」全国大会が京都で開かれた1年後の、2019年12月に作られた「ひとりぼっちをつくらない社会をめざす京都の会」が開いたものだ。

会は、発足してすぐ、活動を京都府下の各地で広げようとしたが、その矢先に、コロナ禍が広がり、集まることも、訪問することも難しくなってしまった。そこで、せめてオンラインでお互いの状態を語り合い、何が今求められているのかを確認し、今後ひとりぼっちをつくらないためにつながりをどう強めていくのかを話し合おうと企画したのが、この集いだ。

前半には、障害のある人たちを雇用している中小企業のコロナ禍を克服するための工夫。事業所(共同作業所)を一時閉じなければならなくなった実態と苦労、今求められている施策。認知症の施設利用が制限されている中での家族の負担の増加とこれに対する政策の不在。コロナ禍での病床や保健所体制のひっ迫、自宅療養・入院待機の増加、そして、このような困難が起きた原因、どんな医療・社会保障体制が求められているかなどの生々しい実態報告がなされた。

そして、後半には、これらの報告者と岡祐司佛教大学教授で「これからの社会 これからの私たち」のテーマでパネルディスカッションが開かれた。その中で、岡教授が、ひとりぼっちを強いる「自助」との決別の必要性、地域を包括するセーフティネットの確立のための行政責任を強調されたのが印象的だった。

もちろん、集いで議論したからといって、すぐに問題が解決するわけではない。ただ、オンラインではあっても、一人一人がつながり、助け合う機会が持てたことがまず貴重だ。次の取り組みは、オンライン集会に参加できなかった仲間に、この思いをどう届け、つながりを広げるかだ。

びとう・ひろき氏
1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。