ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

こころの架け橋

2021.05.17

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

僧侶・歌手 柱本 めぐみ

視覚障がいをお持ちの方の施設、京都ライトハウスのロビーに貸し出し用の白杖(はくじょう)が並んでいます。それは私が主宰する父の日コンサート実行委員会が寄贈させていただいたものなのですが、ある日、それを手にとって「これ、いいね」と言われた方の笑顔を見たとき、私は何か励ましていただいたような気がしました。

7年前、リサイタルの会場予約の抽選に外れてガッカリしていた私に、後日、空いている日があると連絡が入りました。それは父の日でした。たまたまその年は父の三十三回忌。ご縁を感じた私は、ちょっと世間で忘れられがちな「父の日」をアピールしてみようと思い「父の日コンサート」と名づけました。そして、小さなボランティア活動を始めていた頃でしたので、チャリティーコンサートとして開催することを思いついたのでした。

とはいえ、私は福祉に関しては素人。また、コンサート収益での寄付は厳しい現実もあり戸惑っていました。しかし、いろいろな方が協力してくださって、施設利用者もご招待しての開催が叶(かな)ったのです。そして集まった寄付金を届けたとき、施設の方が、「楽しいコンサートができて良かったですね」と言われて、私はハッとしたのでした。

チャリティーコンサートができたのは、もちろん寄付してくださった方のおかげなのですが、準備、そして当日の舞台やホールのスタッフ、聴きに来てくださった方々、どなたが欠けてもできなかったことだと気付いたのです。回を重ね、児童養護施設などにも寄付できるようになったのも、さまざまな形でのご支援があったからなのです。

日舞も組み入れて舞台の充実を図った昨年はコロナで中止。来月19日の開催も微妙な状況ですが、私はこの活動の中で、どなたかの笑顔と皆さまの気持ちをつなげるこころの架け橋を構築するという目標をいただきました。全ての方々に感謝しながら、続けていきたいと思っています。

はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。