ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

スマホはあるけれど

2022.03.28

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

関西大教授 所 めぐみ

孤立を防ぐための居場所づくりへの参加者(主には高齢者)の状況をふまえて、今後の活動案などを検討する会議に出席した。参加者がより主体的にかかわれることをめざして、スマホをいかした活動メニューを今後考えたいという事務局からの報告があった。参加者の多くがスマホを持っていることがわかったからである。

そこで会議では高齢者のスマホ活用について、出席の委員さんに住民による地域福祉活動の経験から伺った。この方の校区でも、スマホを所持する高齢者が増えているという。しかし、コロナの感染拡大期でも可能な顔出しでのコミュニケーションや連絡等には活用できておらず、使いたいのに使えない方が相談に来られているというのだ。

例えば、連絡先の電話番号などが登録できていない(自分でできない)ため、電話をかけられない。わが子らにスマホを持つようにいわれ購入したものの、同じ子どもらに、今度は詐欺にあう危険があるから使うなといわれ、使えない。スマホを使えるようになりたいと、市の広報で案内のあった高齢者を対象としたスマホ講座に参加しようとすると、それは市と提携している携帯会社の代理店による講座で、スマホを保持していない、ガラケーからの買い替え可が参加条件となっており(つまりスマホの販売促進のように見える)、仕方なく帰ってきたなど。市と通信事業者が協力して高齢者のスマホデビューを支援する事業ということであるが、これでよいのかとこの委員さんから行政の担当課にも意見されたとのこと。

所持していることと、使えることは、同じではない。

総務省はデジタル活用に関する機会や能力の格差是正をめざして民間事業者に補助金を交付し、高齢者等を対象として「デジタル活用支援推進事業」を実施しているが、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の基本方針を踏まえ、各地域の実情やニーズを適時適切に把握した取り組みが必要だ。

ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。