2022.06.14
2022.06.14
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
関西大教授 所 めぐみ
「大丈夫ですか。何か私にできることはありませんか」。日本で災害が起きるとすぐに届くメール。送り主は、現在は英国スコットランドのスターリング大学でソーシャルワークや災害マネジメントの教育研究に携わっているドミネリ教授。環境正義や災害支援にとりくむ彼女の著書「グリーンソーシャルワーク」を日本の研究仲間と翻訳する前から、そのグローバルな行動力に感銘を受けてきた。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってまもなく、彼女は「平和のためのソーシャルワーク」を国内外に発信し、大学等ソーシャルワーカー養成機関の国際組織と英国のソーシャルワーカーの職能団体の協力を得てネットワークを立ち上げた。多くのソーシャルワーク関係者・団体がこの呼びかけに応じ、支援のための寄付活動などをすぐに始めた。ウクライナのソーシャルワーカーが必要とすることを考慮した活動のガイドラインの策定、支援に携わるソーシャルワークの教員、実践者、学生たちへのトレーニングとメンタリングをオンラインも活用して早々に始め、現在も継続している。
直後にはウクライナに直接支援に行く者もいたが、現在は現地が安全ではなく、また現地のソーシャルワーカーらが戦争の被災者の支援に本来は費やすべき時間の多くを来訪者への対応にとられないようにするために、訪問は勧めていないそうだ。
ネットワークに加わった人たちは、現在は英国やその他の国で、ウクライナから避難してきた人々への支援活動を行っている。避難者への直接的支援にとどまらず、避難者を受け入れるコミュニティーへの支援も念頭におき、ソーシャルワーカーだけで進めるのではなく、避難者支援に直接関わる医療や学校、地域の関係団体等との多職種・他機関協働を進めている。避難者の尊厳を守り、多様性、支えあいを大切にして。
平和を語るだけではなく、平和の意義を信じ、平和のために動くこと。その実践だ。
ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。