ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

こころの出会い

2022.10.17

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

僧侶・歌手 柱本 めぐみ

ひょんなことからとある社会奉仕団体に入り、ボランティア活動に参加するようになって9年目。ボランティアと言っても私はお手伝い程度のものが多く、たいしてお役に立ててこなかった気もしますが、人は支えあって生きているのだということを実感する機会をいただいてきました。

先日も活動の一環として更生保護施設を訪問し、大切なことに気付かせていただきました。「更生」ということばから漠然とした印象を持っていただけで何も知らなかった私でしたが、施設長がとても分かりやすく話してくださったので、なぜこのような施設が必要なのかを理解することができました。穏やかな話しぶりの中にも、さまざまな厳しい現実があることもうかがい知ることができました。

お話の中で印象に残ったのは、施設でイベントを催すときに食事を作ってくださるボランティアの方がおられ、食事も一緒にするのだというお話でした。食事は人の距離を近くしてくれますから、おそらく会話がはずんだのでしょう。施設を出て自立して生活をするようになってからも、「あのときごはんを作りにきてくれたおばちゃんに会いたい」と訪ねてこられる人があると伺いました。私はそのお話を聞いたとき、ほんのひとときの食事の時間に、こころの出会いというものがあったのではないかと思ったのです。

会いたい人がいる、話したい人がいる、思いを伝えたい人がいる、喜んでほしい人がいる。そして「ありがとう」、ときには「ごめんなさい」が言い合える人がいる。そのように気持ちが動く相手に出会えることは、人が生きていく上で最も大切な財産ではないかとあらためて深く感じたのでした。

日常の生活の中に、人とのさまざまな関わりがあることをあたりまえのように思っていますが、振り返ってみれば、私自身も実に多くのこころの出会いをいただいてきました。いま一度そのことに感謝し、そして、これからも大切にしていきたいと思っています。

はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。