ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

本気度は共鳴する

2023.01.23

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

関西大教授 所 めぐみ

自分の中にあるものを奮い立たせてくれるような、そんな刺激を他者や参加した場から受ける。ある自治体の地域福祉推進に関わる部会の会議の場でそれは起こった。

本年度は1回だけの開催。計画の進捗(しんちょく)状況や達成度等の確認・評価が今回の主たる開催目的であった。部会長である私は、事務局から事前に報告を受けていた。個々のサービスや施策についての取り組み状況の報告にとどまらず、この市(地域)で、地域福祉の状況は目指していたように変化しつつあるのかどうか。それが委員や市民に分かりにくい課題を伝えつつ、ではどうしたらいいかを出せないでいた。

当日、事務局からの説明の後、最初に発言をされたのは、住民組織のリーダーである委員。行政に対して時に厳しい意見も出される方。この日は、地域で実際にとりくまれている実例を話しはじめられた。もちろん個人名等は出されていないが、以前この会議で伺った事例だとわかった。支援の対象とされがちな人が、地域の活動に参加していくなかで、居場所や役割をもち、かけがえのない地域の一員となっていくプロセス。同じことをまた、ではないのである。その後どう進め、それでどう本人、本人の周りの人、地域がどう変わったのか、どう達成できたのかを自らの地域での実践事例で伝えられる。何のために、何をめざし、そのために何を大切にして、どのように取り組んでいるのかが、一貫していて明確なのだ。

本気度が他の出席者や事務局である行政にも共鳴し、活発な議論となった。

地域福祉の計画的推進においては、タスクゴール、プロセスゴール、リレーションシップゴールを設定しての推進が肝となる。設定したタスクの達成はもちろん、どう取り組むかというプロセスや地域の人や組織等の関係性や力動にも着目して取り組む必要がある。

何が、よい変化をもたらしているのか。評価は、価値を明らかに示すことでもある。

ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。