2024.03.25
2024.03.25
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
弁護士 尾藤 廣喜
少子化に対応して、政府は異次元の対策として、「こども未来戦略『加速化プラン』」の案を示している。
その財源年3.6兆円については、既定予算の活用1.5兆円、社会保障の歳出改革1.1兆円と月500円程度と言われる「支援金」の徴収1.0兆円でまかなうとしている。
ところが、月500円と言われる「支援金」が現実に一人いくら、所得階層別にどういう負担率で徴収されるのか、不明のままだ。
しかも、これは社会保険料に上積みして徴収されるということなので、所得の多少に関係なく定額で徴収される場合はもちろんのこと、保険料の負担率に合わせるとすれば、現在年収200万円以下の所得の人が16.5%と最も高い負担率になっているといわれるように、所得の少ない人ほど負担率が高くなることは避けられない。
また、既定予算の活用とは、第1に、インボイス制度導入による消費税増収分や高等教育の就学支援の剰余金を充てるとのことであり、所得の少ない人ほど負担が重い消費税を使用し、子どもの将来を支えるため発足させた就学支援を流用するということから、少子化対策としては逆効果ではないかと思われる。第2に、企業からの「拠出金」を活用し、雇用保険料の引き上げを充てるというが、これも結局、負担増に変わりがない。第3には、国と地方の社会保障関係予算を精査して財源とするというが、これが新たな社会保障の削減となることも懸念される。いずれにしても、余った予算のかき集めという発想は、安定した財源とは到底言えない。
そして、社会保障の歳出改革とは、文字通り、社会保障予算を削るということに等しい。
本来、少子化対策は、子どもを産み育てたいとの希望が持てる国にすることが必要で、社会保障の充実こそまず採るべき施策である。
「実質的に追加負担にはならない」などというごまかしの論理ではなく、財源のあり方について正面からしっかり議論すべきだ。
びとう・ひろき氏
1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。